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翡翠館 庭園

デザインを替えてみました。少しは読みやすくなったかも。前のデザインの方が雰囲気はよかったんですが…… イギリスのロマンス小説の作家、ベティー・ニールズの紹介をしていきます。独断と偏見と妄想にもとづくブログです。どうかご容赦を……。
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Tabitha in Moonlight

Tabitha in Moonlight(邦訳されているかどうか不明)
 

ヒロイン:Tabitha Crawley(看護師)
ヒーロー:Marius van Beek(医師、オランダ人)
 

 ニールズの作品の中には、一般的にシンデレラストーリーと呼ばれるような作品(不遇なヒロインが、裕福な男性を射止めて幸せな結婚をする)が幾つか、というより、多数ありますが、この話は本当の意味でシンデレラストーリーです。
 ヒロインのTabithaは数年前に父親を亡くし、自分が相続するはずの屋敷を継母に奪われ、その継母にはあからさまに嫌われ、「あなたは不器量だ」と面と向かって言われ、継母の娘、つまり、義理の妹Lilithにも嫌われ、嫌味を言われ……、ロンドンで看護師の仕事に就いていたことをいいことに、体よく屋敷から追い払われたような格好で、昔からCrawley家に仕えているメグと一緒にロンドンのフラットで暮らしています。故郷をとても愛しているTabithaですが、継母と義理の妹のことを考えると、実家に帰るのも躊躇してしまう……。そんな時現れたのがMariusです。
 Tabithaの勤める病院の整形外科医のMr.Raynardが足を骨折して仕事ができなくなり、彼が自分の代役として招聘したのがMarius。しかも、彼はCrawley家の古い知り合いと知り合いだったため、義妹のLilithも彼を知ることとなります。自分の美貌に絶対的な自信をもっているLilithは、数回会っただけで彼の恋人気取りになり、なんだかんだとMariusに付きまとい、またMariusもしっかりそれに応じてしまいます。彼に恋をしているTabithaにあてつけるように……。
  前半部分は、そういうMariusの態度がとっても嫌でした。Mariusのような男性が、Lilithのような女の子を相手にするわけないと思っていても、いや、思っているからこそ、「何でそんなに足しげくCrawley家に通うわけ?」と読んでいてフラストレーションがたまるたまる。しかも、わざわざ「これからLilithに会いに行くんだ」とTabithaに言ってから行くところも、なんだかなー、と納得できない。おかげでTabithaはMariusがLilithを愛しているのだと思い込んでしまうのです。
 実は、最後の最後で、このMariusの行動の理由がすべて明かされます。だから、まあ、結果的にはよかったんですが、とにかく前半はTabithaがかわいそうでかわいそうで、「頑張れ!Tabitha」と読みながら応援してました。こんなに力を込めて応援したヒロインは初めてです。
 後半、舞台はオランダのMariusの家に移ります。足を骨折したMr.Raynardと、同じように骨折で入院しているMr.Bow(実は彼はMariusの学生時代のチューターで、かつ友人)の静養のため(実際はヨットでセーリング三昧をするためなので、全然静養になってないんだけど)Mariusが2人をオランダの家に招待し、Tabithaはその付添看護婦として同じように招かれたのです。ああ、これでMariusとLilithをしばらくの間引き離すことができる、と喜んだのもつかの間、なんと継母のMrs.CrawleyとLilithaがオランダにやってきてしまいます。なーんーでー!
 ヒロインが継母にいじめられるという話は他にもいくつかありますが、いや、もう、たぶん、継母の中ではこのMrs.Crawleyが最悪じゃないかな。そのうち、最悪継母選手権でもやってみようかなと思いますが、ここまで酷い継母は「悲しきシンデレラ」に出てくる継母と双璧をなすかもしれない……。
 結論から言えば、MariusはLilithに会う前からTabithaと結婚しようと決めていて、Lilithたちと関わったのも、みんなTabithaのためだったのです。最後の最後でMariusが説明してくれたおかげでフラストレーションは解消。本当に溜飲が下がる思いでした。
 ニールズの話としては長ーい話でしたが、頑張って読んだ甲斐がありました。これはそんなお話です。

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硬い話、柔らかい話

硬い話、柔らかい話
 
 今回は作品の紹介ではなくて、ニールズの作品から受ける印象についてその硬さを基準に考えたことを書いてみたいと思います。
 寝る前にいつもニールズの作品を少しずつ読んでいるんですが、先日「せつない秋」を読み終わって、次に何を読もうかと思った時に、「指輪のゆくえ」が頭に浮かんで本棚から引っ張り出しました。それでふと思ったんですが、この2作品、私が読んだニールズの作品の中では硬い話の双璧なんですね。私はどちらかというと、こういった硬い話は苦手で、あまり読み返したりしないんですけど、たまーに、そんな硬さに触れたくなるときがある。多分今がそんなときなんだろうなあ。実は「せつない秋」を読む前に読んでいたのが「愛を告げる日は遠く」でありまして、これも硬い話の部類に入ります。
 
 ところで、私の言う「硬さ」とは何でしょう。何でしょう……? すみません。私にもよくわかりません。でも、何かがピンと張り詰めた感じのする作品ということになるのかな。先ほど挙げた3作品、共通して言えるのは① ヒロインが美人で有能、② ヒーローがヒロインに対して辛辣な態度を取る、③ 本当は愛していながら、ヒロインとヒーローはお互いに嫌いあっていると思い込んでいる というところです。つまり、ヒロインは、最初はヒーローのことを気に入らないと思っていますが、そのうち、実は自分が彼を愛していることに気がつきます。でも、既にその時には彼との冷え冷えとした関係が成立してしまっていて、プライドのためか何のためか、自分から歩み寄ることも出来ずに悶々と悩んでしまう。悩みながらも表面上は平静を装い、仕事上では立派にヒーローを支えるパートナーになろうとする、そのヒロインの精神面での強さが「硬さ」を感じる理由なのかもしれません。でも、実際には、その硬さはヒーローの態度の硬さそのものだったりして……。それもあるのかもしれないけれど、ヒーローが辛辣な作品でも「ノルウェーに咲いた恋」や「ケーキで恋を」なんかはあまり硬さを感じないんですよね。これらの作品のヒロインはどれも美人じゃないんです。まるで、ヒーローの辛辣さを受けるヒロインが美人か美人じゃないかで硬さが決まってくるような……。
 
 それで、今まで読んだ作品を(このブログで紹介した作品を中心にして)幾つか選んで硬さのランクをつけて並べてみました。
 
 「指輪のゆくえ」
 「せつない秋」
 「愛を告げる日は遠く」
 「Tulips for Augusta」
 「少しだけ回り道」
 「春の嵐が吹けば」(ブログではTempestuous Aprilとして
           紹介しましたが、2月にハーレクインから
           「春の嵐が吹けば」として出版されました)
 「愛は深く静かに」
 「幻のフィアンセ」
 「片思いの日々」 
 「猫と紅茶とあの人と」
 「ドクターは御曹司」
 「春を待ちわびて」
 「聖夜に祈りを」
 
 で、思ったんですけど、私が読んだ作品の中では、やっぱり「指輪のゆくえ」が一番硬くて、「聖夜に祈りを」が一番柔らかいなあ。「指輪のゆくえ」が鋼の剣だとすると、「聖夜に祈りを」はもふもふの毛布って感じがします。
 こうやって並べてみると、同じ作者が書いたとは思えないくらい印象が違いますね。あ、それともう1つ気がついたことがある。硬い話は初期の作品に多い……、かもしれない(あとでよく調べてみよう……)
 
 硬い話は苦手ですが、気高いヒロインは大好きです。でも、気高いだけではなくて、その中に健気さや一途さがあってこそニールズ作品のヒロインなのでしょう。
 

ケーキで恋を

ケーキで恋を(原題:Cassandra by Chance、初版1982年)
 
ヒロイン:カッサンドラ・ダーリン(看護師)
ヒーロー:ベネディクト・ファン・マンフェルト(医師、オランダ人)
 
 この作品はハーレクインのベテラン作家の初期の作品を復刻する企画で出版されたようです。帯に、「ニールズにこんなヒーローがいたなんて」と書かれてありました。こんなヒーローって、どんなヒーロー?と思いながら読んでいきました。
 確かに、ニールズの作品の中では珍しいタイプのヒーローです。ベネディクトは穏やかなときもありますが、皮肉屋で度々癇癪を起こす。ニールズのヒーローは穏やかで優しいヒーローが多いので、まあ、変り種と言えば変り種ですが、こんなヒーローが他にいないわけではない……。「教授と麦わら帽子」のチャールズとか「ノルウェーに咲いた恋」のサイモンとか。むしろ、ベネディクトに特徴的なのは性格ではなくて、彼の境遇です。医者で裕福、というのは他のヒーローと同じですが、彼の場合、目を患っていて、微かに光の明暗がわかるものの、ほとんど目が見えないのです。しょっぱなからこんなハンディ背負ってるヒーローには初めてお目にかかりました。彼の癇癪も、とどのつまりは、また目が見えるようになって仕事に戻れるのか、という不安から来てるんですよね。で、そんな彼をヒロインのカッサンドラが支え、励ますのです。

 実は、私にとっては、ヒーローよりも、ヒロインのカッサンドラの方が新鮮でした。冒頭部分で、彼女は「物静かでおとなしい」性格だと表現されていますが、とんでもない。
甥のアンドリューから、「人食い鬼の隠れ家」があると聞くと、こっそり見に行ったり、家の中を覗くために不法侵入しようとしたり、ひどいベネディクトの毒舌にも敢然と立ち向かい言い合いをする。これのどこが「物静かでおとなしい」わけ?

 旅行に行った姉夫婦の子供の面倒を見ながらカッサンドラは、「人食い鬼の隠れ家」に住んでいるベネディクトと、彼の使用人(?)ヤンとの交流を重ねていきます。ベネディクトの性格が性格だし、目の事で苛立つベネディクトと付き合うのは本当に大変そうですが、どんなに毒舌を吐かれても、また会いに行きたくなるカッサンドラ。ある時、カッサンドラが庭を掃除していると、ヤンがやってきて、ベネディクトに会いに来てくれないかと頼みます。すぐにでも行きたい気持を抑えて「忙しいからまた次にでも」と答えたカッサンドラですが、ヤンからベネディクトがひどい頭痛がしていると聞かされると、箒を投げ出してすぐにベネディクトの下へ飛んで行こうとする……。あれ?誰かに似てるかも、と思い、ふと頭に浮かんだのが「サザエさん」でした。確かに、明るくて、誰にでも親切。好奇心旺盛で他人に物怖じしない。しかも、甥のアンドリューと姪のペニーはカツオとワカメ的存在になってるし。あー、サザエさんがロマンス小説のヒロインになったらこんなかも、と思わず1人で納得してしまいました。もっとも、ヒーローのベネディクトはマスオさんとは対極にいるような人ですが。
 
 ある程度目が良くなっていると分かったベネディクトはオランダに帰ることになり、カッサンドラは看護師としてついて来てくれないかと頼まれます。最初は拒みますが、結局はついていくことにしたカッサンドラ。そして姉夫婦が帰ってくるのを待って、オランダに渡り、看護師としてベネディクトに付き添う生活が始まります。これからあとはベネディクトに係わる女性たちについて暴走する妄想と戦うカッサンドラの姿が痛ましい……。ベネディクトはベネディクトで検査の結果を悲観してまた癇癪を起こした挙句、カッサンドラの妄想を利用して彼女と別れようとするし……。
 
 でも、最後の最後で、ベネディクトはカッサンドラをつかまえます。「言っておくけど、僕は非常に気難しくて一緒に暮らしにくい男かもしれない。しかし、僕は死ぬまで、いや、あの世までも君を愛し続けるよ」……なかなかいいプロポーズの言葉だなあと思いました。気難しくて怒りっぽくても、彼は正直な男です。
 
 

すみません、訂正します

12月25日にUPした「やどり木の下のキス」で、ヒロインの相性を「エイミー」と書いてしまいましたが、正しくは「エミー」です。申し訳ありません。訂正します。UPした分も訂正しておきました。

やどりぎの下のキス

やどりぎの下のキス(原題:The Mistletoe Kiss、初版1997年)
 
ヒロイン:アーメントルード(愛称エミー)・フォスター(電話交換手)
ヒーロー:ルエルド・テル・メノルト(医師、オランダ人)
 
 今日はクリスマス、ということで、クリスマスにちなんだ作品を選びました。
 この話好きなんですよー。でも、最初に読んだ時はそうでもなかったんです。ヒロインの性格はいいんだけど、ヒーローのルエルドの印象がいまいちだなあと思っていたのですが、もう一度読み返してはまりました。
 確かに、物語の始めの方では、ルエルドはエミーに意地悪なことばかり言ってきます。エミーはルエルドが顧問をしている病院で電話交換手をしていますが、彼はエミーと出会って以来、交換室を通りかかるたびに彼女に話しかけてくるようになります。夜勤の眠気覚ましに持ってきた編み物を皮肉ったり、彼女の私生活について根掘り葉掘り尋ねたり……。でも、これって実は変な話で、エミーは決して美人ではなく、病院の同僚からも「古風で野暮ったい」と思われていて、地位と名誉と財産と素晴らしい容貌に恵まれたルエルドとは、どう考えてもつりあう女性ではないし、しかも、彼にはアンゼリーネという美しい婚約者がいる……。普通なら、ルエルドのような男性が、エミーのような女性を気にする方がおかしいのです、が、気にしてしまうんですよね。
 最初は冷淡で傲慢で意地悪、と思っていたルエルドが、読んでいくうちにどんどん、優しくて親切で頼りになる人物に変化していきます。エミーの父親(教師だったのですが、数年前に解雇されました)が意に沿わない仕事をしていると知ると、伝を頼って教師としていい職場を探してあげたり(もちろん秘密裏に)、エミーが強盗に襲われた時も電話1本で駆けつけてきて、怪我が治るまで自分の屋敷で養生させたり。
 ルエルドには婚約者がいる。だからエミーはルエルドへの思いを諦めようとしますし、それはルエルドの方も同じで、結婚した後のアンネリーゼとの生活に不安を抱きながら、彼はエミーへの思いを断ち切ろうとします。でも、2人ともなかなか思うようにはいかないのです。
 ルエルドはニールズの作品のヒーローの中では堅物の部類に属します。要するに生真面目で、多分(あくまで私の想像ですが)女性とあまり付き合ったことがないのかもしれません。それに高潔な部分もあって、自分からプロポーズした以上、自分から婚約解消を持ち出すことは出来ないと考えます。それなのに、エミーたち一家が落ち着いたクリスマスを過ごすことが出来ないとわかると、クリスマスにオランダの自分の家に招待してしまう……。招待する方もする方だけど、それを受ける方も受ける方で……、でも、両親が承知してしまったからには仕方ありません。エミーと両親はルエルドと一緒にバタバタとオランダに出かけて行きます。
 オランダのルエルドの屋敷に着いたフォスター一家を、ルエルドの家族は暖かく迎えます。エミーはアンゼリーネに痛烈な皮肉を言われますが、彼の両親や妹たち、親戚の人々にはいたく気に入られ、特に、アンネリーゼを嫌っている妹たちはエミーこそ兄の花嫁に相応しい、何かが起こって、アンネリーゼとの婚約が破談にならないだろうかと願うのです。
 ヒーローには美人で性格の悪い婚約者がいる、という設定は、ニールズの作品の中ではもう何回も出てきますが、そういう設定の話でも、ヒーローの性格次第で印象は違ってくるものです。この作品の場合、ルエルドの真面目で高潔な部分と、エミーの控えめだけど、芯がしっかりしていて、常識的な穏やかさのある性格とがこの作品特有の風合いを醸し出してるんだろうなと思います。
 ちなみに、やどりぎというのは、他の木に寄生する植物で、西洋では魔よけとしてクリスマスにこのやどりぎを飾るのだそうです。そして、このやどりぎの下では、男性はどんな女性にもキスできるという慣わしがあって、ちゃっかりルエルドはその慣わしを利用してエミーにキスをします。この時点では、まだ婚約を解消していなかったので、ルエルドとしてはそのチャンスを利用するしかなかったんでしょうね。彼は本当に堅物です。でも、そう言う堅さも好ましい……。最初はあまり好きになれなかったヒーローですが、今では好きなヒーローのベストテンに入るほど気に入ってます。
 

あなたのいる食卓

あなたのいる食卓 原題:A Gentle Awakening 初版:1987
 
ヒロイン:フロリナ・ペイン(コック)
ヒーロー:ウィリアム・セドレー(医師、イギリス人)
 
 ニールズの作品は大好きな私ですが、どうしても読めないテーマの話(「とりあえず結婚もの」で、これについてはそのうち書きたいと思います)もあるし、読み終わってから「……?」という話もあります。今回はそんな、とてもちぐはぐな印象を持った作品についてです。
 
 まず、この作品で一番目を引いたのは、ヒロインの恋敵、つまりヒーローの婚約者、ワンダ・フォーテスキューの性格の悪さです。もう、憚る事のない毒舌(しかも、悪意に満ちた)家で、傲慢で、意地悪……。ヒロインの恋敵は性格が悪いと相場が決まってますが、それにしたって……と、思うくらい、今まで読んだニールズの作品の中では、彼女の性格の悪さはピカ一です。作品の中でヒロインのフロリナが、あまりのワンダの酷い言葉と、それに加えて平手打ちを食らわせられたことに腹を立てて彼女の頭からレモネードを浴びせかけるシーンがありますが、これはフロリナが気性の激しい女性だからではなく(彼女は控えめで優しい女性です、もちろん)、それほどワンダが酷い女性だからです。
 
 で、ヒーローのウィリアム様(作中では、フロリナが彼の家のコックをしてることもあってそう言う呼び名ででてきます)は、子煩悩で(ウィリアム様は結婚歴があり、ポーリンという名の可愛い娘がいます)、それに優しくて気がきく男性です。ポーリンと家政婦をしているナニーがはしかになって倒れた時、フロリナの孤軍奮闘振りを知った彼は、フロリナの代わりにいろんな家事を買って出てくれます。本当にやさしー男性なのですが、何で、ワンダなんかと婚約したの?しかも、ワンダの傍若無人の言動を見ても平然としてるし。わからないー。おまけに、彼の元の妻は、夫がありながら他の男性と遊びまわっていたというこれまたとんでもない女で、一度ならず二度までも、何でそう言う女に引っかかるんだろう。偉いお医者様なのに(あ、関係ないか)
 
 もっとわからないのは、フロリナと結婚することに決めたウィリアム様は、ロンドンの家でフロリナと生活するために(彼はロンドンで働いていて、生活の基盤はロンドンなのですが)、ポーリンを寄宿学校へ行かし、週末だけ家族3人で生活することにします。ちょっと待て、何でフロリナと結婚するからって言って、ポーリンを寄宿学校に追い払わないといけないの?家族3人、ロンドンの家で暮らせばいいじゃない。確かに、彼が田舎のウィール・ハウスを買ったのは、娘を田舎で育てたかったからですが、娘を田舎で育てるためなら(しかも、寄宿学校に入る段階で、もうウィール・ハウスには週のうち2日しか住めなくなるし)あんなに懐いていたフロリナと引き剥がすのも厭わないってことですか?わからないー!
 
 私が一番不可解に感じたのは、最後のポーリンの件ですが、それにしたって、ウィリアム様、やることがわからなさすぎです。

ドクターにキスを

ドクターにキスを 原題:An Ordinary Girl 初版:2001年
 
ヒロイン:フィリー・セルビー(家事手伝い)
ヒーロー:ジェームズ・フォーサイス(医師,イギリス人)
 
 最初に出版されたのが2001年ということです。つまり、ベティ・ニールズの亡くなった年……。他にも2001年に出版された本があったので、彼女は亡くなる直前まで小説を書いていたのかなあと、ちょっと驚きです。確か亡くなった時は90歳くらいだったはずなので、その点でも驚きなんですが……。
 
 この作品は他の2人の作家と一緒にコラボ的に出版された本の中の1作品で、他のニールズの作品よりもちょっと短いんですが、これまでの作品のニールズ的要素をふんだんに盛り込まれていて、小作品だけど今までの作品の集大成(といったら大げさですが)というか、典型そのままという感じのお話です。
 
 ヒーローはもちろん、医師でハンサムお金持ち。おまけに美人で意地悪な婚約者がいる。ヒロインは決して美人ではないが、気立てがよく、牧師の父、優しい母、美人の妹たち(4人)に囲まれて田舎暮らしに満足している。ある日、道に迷ったジェームズが通りかかったフィリーに道を尋ねたことがきっかけで2人は出会います。そのあとも神の導きのように偶然の出会いを繰り返していくうちに、ジェームズは自分が間違っていた事に気が付いていきます。そう、シビルと婚約した事です。
 
 ヒーローに婚約者がいる場合、ヒロインと恋に落ちたヒーローが、どうやって婚約者と婚約を解消するか、という問題からはどうしても逃れられません。ニールズの作品では偶然、婚約者の不貞が暴露され、めでたく婚約が解消されるというパターンが多いのですが、晩年の作品では、ヒーローが潔く自分から婚約解消を言い出すパターンが幾つか出てきます。「片思いの日々」のヘンリーもそうでしたし、この作品のジェームズもそうです。最も、彼の場合、解消を言い出そうとするたびに、それを察知したシビルに邪魔をされ続けてしまいますけどね。
 でも、シビルはジェームズを逃したくない一心で(愛しているからではなく、お金のために)策を弄しすぎて自滅……。結果的には目出度し目出度しなのでした。
 
 
 なにぶん、作品として短すぎて、もうちょっとじっくりと書いてもらいたかったなあと思わずにはいられませんが、それでも、しっかりニールズワールドを堪能できる作品です。
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HN:
Mrs Green
年齢:
58
HP:
性別:
非公開
誕生日:
1965/07/23
職業:
主婦
趣味:
ありすぎて書ません
自己紹介:
夫と子供2人の専業主婦です。
宮崎生まれで、現在沖縄に住んでいます。
青い海も好きですが、それよりふるさとの緑の山々が恋しい……。
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