翡翠館 庭園
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愛しのヤング・レディたち
前回、最後の方でBeatrixのかわいらしさについて書きましたが、今回はそれに関連して、ニールズの作品に出てくる脇役の中でも、少女の脇役について書いてみたいと思います。
ニールズの作品の中には、ヒロインを励ましたり、助けたり、時にはヒーローとの橋渡し役になってくれる少女がよく出てきます。今まで紹介した作品の中では、「とっておきのキス」に登場するヒロインの妹エズミーや、「あなたのいる食卓」のヒーローの娘のポーリン、「ケーキで恋を」のヒロインの姪ペニー、それに、少女というには年齢が少し上になりますが、「夢の先には」のヒロインの妹キティなどがそれに当たります。でも、その他にも「ドクターと私」のヒロインの妹ポリーとか、「初めての恋」のヒロインの妹パメラとか、ニールズの作品の中には結構そういうキャラクターが登場してくる。皆ヒロイン思いで愛嬌があり、真面目で常識人のヒロインを補うかのように天真爛漫な少女たちです。
実は彼女たちのようなキャラクターが出てくる話はあまり深刻なものにはなりません。彼女たちがヒロインとヒーローの関係が深刻にならないように口出しをする、ということではなくて、まだあどけなくて楽天的なキャラクターがヒロインのそばにいると、話の流れとしてシビアになることができないのだと思います。それに、彼女たちの存在は実はヒーローにとっても好都合で、ヒロインに妹や弟がいる場合、ヒーローはまず、彼らを味方にすることが多いのです。いや、味方にして、彼らに何か手伝ってもらうとかいうことではなくて、とにかく、妹(もしくは弟)たちに、自分のことを「義理のお兄さんとしては最高」と認識してもらう。つまり、彼らの心をつかんでしまうわけで、そう言った話の場合、一番最後に陥落するのがヒロインだったりするのです。
少女とひとくくりにしても年齢の幅は大きく、たぶん、私が読んだ中で一番小さな天使は「クラッシック・ラブ」に出てきたヒーローの姪ロージー(1~2歳くらい?)、つぎが前回紹介したBeatrixかな?こんなに小さい少女は本当にただただ可愛いのです。そんな可愛い少女の養育のためにヒーローとヒロインが接近するという話がほとんど。
次が「忘れえぬ面影」に出てくるネル(7歳くらい?)で、このくらいになると、大人の恋愛はまだわからないものの、少女らしい率直さを発揮してヒーローとヒロインが出会う機会を増やしてくれます。
次がエズミ―やポーリンなどのようなティーンエイジャーで、このくらいの年代になると、そろそろ大人の恋愛感情というものもわかりかけてくるころで、ヒロインの恋路の手助けをしてくれるようになります。
以下、「とっておきのキス」からの抜粋
エズミ―:「姉さんはとても器用なのよ。ワープロや何かのことじゃないわ。ラスコンに負けないくらいお料理が上手で、縫い物もうまいの。いい人と結婚してくれたらうれしいんだけど…」
シモン;「大丈夫さ。むしろ結婚していないのが意外だよ」
エズミ―:「チャンスはいっぱいあったのよ。でも、デートする暇はないし、デートするにはすてきな服がたくさんいるし」
姉がいかに妻として理想的かを売り込むだけではなく、さりげなく家庭の窮状をうかがわせるような説明もするという、意図的なのか、無意識なのかわかりませんが、エズミ―の心憎い気遣いです。
さて、ヒロインの妹だからと言ってすべてがヒロインにとって助けになる存在かというとそうではなく、色々と酷いことをする妹も結構いるのですよ。「愛をはぐくんで」のユーニスとか、「ガラスの靴はなくても」のジョイスとか、まあ、他にもいろいろ。でも、そういう酷い妹はもう少女とは呼べない歳になっているし、大体は義理の妹、つまり、親の再婚相手の連れ子というパターンが多いです。
ニールズの作品に出てくる素敵なヤング・レディたちは、一言で言えば「和む存在」。ともすれば、暗く、沈痛な方向に傾こうとするヒロインの心を明るく慰めてくれるなくてはならない存在です。
硬い話、柔らかい話
紹介しましたが、2月にハーレクインから
「春の嵐が吹けば」として出版されました)
ニールズ作品のタイトルについて
余計な事とお思いでしょうが
ニールズの作品を鑑賞するにあたって、意味のないこと、だとは思うのですが、ニールズの作品を古いものから新しいものまでリスアップしていて、2,3気が付いた事があるので今回はそれについて書いてみようと思います。
まず、これは以前書いたことがあるのですが、古い作品はヒーローの心理描写がほとんどなく、新しい、つまり、ニールズにとって晩年の作品になるほど、ヒーローの心情が描かれている作品が多いということです。1990年前後を境にして、ヒーローの心理描写が多くなっているような気がします。初期の頃の作品は、ヒーローが何考えているのか、最後の最後にプローポーズするまで分からない(ま、大体分かるんですが)のですが、後期の作品になると、「デイジーの小さな願い」のユールスのようにヒーローの苦悩がありありと分かるようになっています。個人的にはどちらも好きですが。
次に、ニールズの作品のヒーローはほとんど医者で、それはニールズの作品全体を通して変わりませんが、ヒロインの場合、1995年以降、ほとんど看護婦以外の職業になってきます。ニールズの作品を全部読んだ訳ではありませんが少なくとも、私が読んだ中では1995年以降の作品に看護婦のヒロインがいません。職業的には秘書だったり、ナニーだったり、家事手伝いだったり……。ニールズ自身、看護婦でしたが、60歳くらいで看護婦を引退し、作家生活に入ります。さすがに、引退して30年も経つと、最新の医療技術についていけなくなったからかなあとか、考えたりしますが、ヒロインがどんな職業でもニールズの作品の魅力は変わりません。むしろ、私の好きな作品は、ヒロインが看護婦でない作品の方が多いような気がします。
最後に、これも、以前書いたことですが、初期の頃の作品には不遇な少年、青年時代をおくったヒーローが何人が出てきますが、そのあとにはほとんど出てきません。ニールズの全作品を読んだわけではありませんが、少なくとも私が読んだ範囲ではそうです。ニールズの作品のヒーローのほとんどは、不遇どころか、大勢の兄弟がいて、優しい両親がいて(父親は亡くなっているという設定の話もかなりありますが)幸せそのものの家庭に育っています。で、ほとんどの場合、長子で長男なんですよね。で、その兄弟たちもみんな良い人で……(「海辺の思い出」に出てきたヒーローの弟だけは最低でしたけど)。これって、ヒロインが不遇な環境にある場合が多いので、それと対比させるためかなあと思ったりしますが、例えば、「春を待ちわびて」や「幻のフィアンセ」やみたいに、兄弟がたくさんいて幸福な家庭のヒロインもいることだし、まあ、ヒロインの環境は千差万別ですね。
ニールズの作品のうち、まだ半数をちょっと超えた程度しか読んでないので、あれやこれやと指摘するのもおこがましいのですが、個人的にはこういうことを考えるのは楽しいです。あと、いろんな作品の中に、他の作品のヒーロー、ヒロインが夫婦として登場している事を発見した時は思わずにんまりしてしまいます。そういう、スピンオフについては、また機会があったら書きたいと思います。
愛があれば年の差なんて
愛があれば年の差なんて
今回はヒーローとヒロインの年の差について書いてみようと思います。
ニールズの作品、とにかくヒーローとヒロインの年が離れいています。もちろん、ヒーローが年上です。今まで70冊くらいニールズの作品を読みましたが、ヒーローとヒロインの年の差は平均して12,3歳くらいでしょうか。今まで読んだ中で一番離れていたのが「せつないプレゼント」の19歳(だったと思う)、一番近かったのが「Fifth Day of Chiristmas」の5歳(だったと思う)です。実際、私自身、夫とは6歳離れていて、「結構離れているね」と他人に言われたことがあるし、夫の友人で14歳年下の奥さんをもらった人がいて、その時には「すごく離れてるー」と自分でも驚いた記憶があるので、ニールズの作品を読み始めた時は「何でこんなに年の離れたカップルばっかりなんだ」と思っていたんですが、はっきり言って、もう慣れました。慣れたどころか、「やっぱりこれくらい離れてなきゃだめよね」と思うようになってしまいました。慣れって怖い……。
こんなに年の差が開いてしまうのは、ニールズの趣味、かも知れないけど、実際に考えてみればそうならざるを得ないだろうなと思います。ヒーローはとにかく大人の男性で、仕事の面ではそれなりに成功していて、頼り甲斐がなければならない、となれば、少なくとも20代の男性にそれを求めるのは無理でありましょう。で、ヒーローの年は30代、しかも、後半に偏ってくるのです。実際、現代の日本では30代でも男性に頼りがいを求めるのは無理だろうと思うのですが、そこはそれ、イギリスは大人の国なのでこういう男性も結構いるのでは……と(あ、半分以上はオランダ人だったな)。
一方女性はというと、大体20代中ごろが多いですね。一番若いヒロインで22歳、年とったヒロインで30歳です(私が今まで読んだ限りでは)。これもニールズの主義なのか、30代のヒロインはまずいない。まるで女性は30歳までに結婚すべき、と言ってるみたいです。時代的なものもあるんでしょうけど、「リトルムーンライト」のヒロインは25歳なんですが、「だって、私はオールドミスだわ」と言うシーンを読んだ時には、「おいおい、25歳でオールドミスかい」と驚きましたね。そう言えば日本でも昔は「クリスマス過ぎないうちに結婚しないと(25歳を過ぎれば嫁の貰い手がない)」とか言われてましたね。今ではどこの世界の話だろうと思いますけど。
ニールズの作品のヒロインたちは、看護師としてキャリアを積んだ人でも、結婚したら仕事をやめて夫と子供の世話と家事に専念したいと考えている人がほとんどで(だからニールズの作品が大好きなんですが)、だから愛し、愛してくれる人にめぐり合えたら即仕事をやめて結婚することに躊躇がない。22歳とか23歳でも、「まだ遊んでいたいしー」とか「もっとキャリアを積みたいから」とか言うヒロインはいません。そんなこともあってヒロインの年齢は低めになり、かくて、ヒーローとの年の差が広がる……とこうなるわけですね。
ニールズのこういったヒロイン、ヒーローの傾向は現代社会ではむしろ否定されています。でも、それにもかかわらず、ニールズの作品に根強い人気があるのは、昔風の考えを持った女性がまだまだいることはいるんだということを表しているんだと思います。
誰が一番貧乏か
色々テーマを考えたんですが、今回は「誰が一番貧乏か」ということについて。
もちろん、これはヒーローには当てはまりません。ニールズの作品のヒーローはみんなお金持ちですから。しかも、半端じゃない。「忘れがたき面影」のハソは自分の飛行機を持っているという話しだし、「リトル・ムーンライト」のマルクはオランダの実家に帰る前にセリーナを伯母さんの家に送っていくために、イギリスからオランダまで飛行機をチャーターするし。「ドクターは御曹子」のワーレはお城に住んでいるし。とにかくオランダとイギリスに屋敷を何軒も持ってる人たちばっかり。だから、貧乏選手権に名を連ねるのは必然的にヒロインだけです。
で、私が読んだ中で一番貧乏は「幸せをさがして」のレベッカか「小さな愛の願い」のヘンリエッタでしょうねえ。レベッカは継母と義理の兄に家でこき使われ、家族のように飼ってきた犬と猫を虐待されて、ほとんど無一文で家を飛び出したところをティーレに拾われます。ヘンリエッタは孤児院で育ち、大人になって孤児院を追い出されてなんとか1人で暮らしてますが、仕事は不安定でひどい風邪を引いただけですぐ解雇。家主も無情で、入院している間に他の人に部屋を貸してしまって、お金もなければ住む所もない……。いや、待てよ、他にもこれと同じような状況のヒロインがまだまだいたはず……。「ようこそ愛へ」のデボラとか、「大聖堂のある街」のキャサリンとか……
つまり、ヒーローが全員裕福なのに対して、ヒロインは半々くらいの割合で大なり小なりお金に困ってます。父親が死んで経済状態が苦しくなった、とか、継母に苛められて家を飛び出したとか、借金返済の為に家を手放さなくてはならないとか……。でも、読者としては、そういう困難な状況にもめげずに頑張るヒロインの姿に打たれるわけですよ。多分、ヒーローたちもそんなところに惹かれるんだろうなあ……。
私がニールズの作品に魅かれるのは、ヒロインが本当に地道な性格で、根っからの庶民の私としては、その生活信条とか金銭感覚がとても共感できるから、というのも理由の1つなんです。幾つかの作品で、ヒロインが封筒の裏側なんかを使ってお金の計算をするシーンがあります。「あ、これなら新しいコートが買えるかも」と、ホクホク喜ぶヒロインの姿が好きですね。
こういうヒロインが裕福なヒーローと結婚しても、絶対正しいお金の使い方をしてくれると思っています。
なんだか、テーマと違ったことになりましたが、これからも時々こういうテーマで書いていこうと思います。
宮崎生まれで、現在沖縄に住んでいます。
青い海も好きですが、それよりふるさとの緑の山々が恋しい……。