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翡翠館 庭園

デザインを替えてみました。少しは読みやすくなったかも。前のデザインの方が雰囲気はよかったんですが…… イギリスのロマンス小説の作家、ベティー・ニールズの紹介をしていきます。独断と偏見と妄想にもとづくブログです。どうかご容赦を……。

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赤毛のアデレイド

赤毛のアデレイド(原題:Sister Perters in Amsterdam  初版:1969年)

ヒロイン:アデレイド・ピーターズ(看護師)
ヒーロー:クーンラート・ファン・エッセン(医師 オランダ人)


 この作品は、べティー・ニールズの記念すべきデビュー作なのですが、実は、奇遇なことに、私が一番最初に呼んだニールズの作品なのです。ニールズの作品に出会う少し前にハーレクインに嵌りまして、リン・グレアムとかペニー・ジョーダンや、その他の作家の作品を手当たり次第に読んでいたんですが、ニールズのこの「赤毛のアデレイド」を読んだとき、何となく目からうろこが落ちたような気分になりました。
――こんな話もありなんだ――
 刺激的な男女の絡みがなく、ラブシーンと言えるのはキス・シーンだけ。しかもほんの数回。裏切っただの復讐だのといったどろどろとした愛憎劇とは全く無縁で、看護師交換制度でイギリスの病院からからオランダの病院に異動になったアデレイドの1年間が淡々と描かれています。登場人物たちはみな穏やかな性格で(もちろん、アデレイドの恋敵だけは違いますが)オランダの四季折々の風景だとか、習慣だとかが丹念に描かれていて、読んでいるうちに何とも心がほっこりしてくる。もちろん、アデレイドの恋路には多々邪魔が入るし、そもそも自分とクンラートとは住む世界が違う、と思っているアデレイドは自分の恋を諦めようとします。それがクーンラートが男爵であると知ってからはなおさらで……。

 クーンラートはたぶん30代の後半でしょう。40歳にはなっていないと思うのですが、とても大人の印象があります。それは多分、アデレイドとクーンラートが医師と看護師としての関係と言うよりは、イギリスから派遣されてきたアデレイドに対して、クンラートが責任をもっているという状況のためか、学生と先生の関係に似ているからかもしれません。もっとも、ニールズの小説、というよりハーレクインの小説ではヒーローが皆頼りがいのある大人なんですが、このクーンラートはそれまで読んだ作品のヒーローとは一味違うのです。
 ニールズがこのデビュー作を発表したのは1969年。話の内容自体は、これは現代の話だと言われてもあまり違和感がないのですが、ただ一つ、現在の作品と違うのは、ヒーローが子供の頃に戦争を体験しているという点です。実はクーンラートは戦争で両親を亡くしていて、おまけにその時の怪我が原因で片目が見えません(ニールズの初期には、こんな風に戦争でつらい子供時代を送ったヒーローが何人かいるのです)。大人になって爵位をついで、医師として成功した生活を送っていても、子供の頃の不幸な出来事が少しだけではあっても何となく陰を落している感じが、他のヒーローとは違うところなのかな、と思ったりもします。

 それにしても、私が感心するのは、この作品がデビュー作でありながら、すでにニールズワールドが完成されているという点です。いや、完成されているというか、実は私が読んだ80以上の作品の中で、私なりに完成度で点数をつけるとすれば、これは実はNo2くらいにランクインするんです。うん、完璧。

 何はともあれ、私はこの本でニールズに出会えて本当にラッキーでした。その時点ですでにニールズが亡くなっていたことが残念ですが、今生きていたとしたら102歳ですから、さすがにそれはねえ……。でも、91歳で亡くなるまで執筆活動を続けていたというのは、ほとんど驚異です。これから先新しい彼女の作品を読むことはできないけど、素敵なお話をたくさん残しておいてくれたことに感謝感謝です。
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せつない秋


せつない秋 原題:Tangled Autumn 初版:1977
ヒロイン:サファー・デヴェニッシュ(看護師)
ヒーロー:ロルフ・ファン・ドイレン(医師、オランダ人)
 
これは、確か私がニールズの作品で2番目に読んだ本だったと思います。この頃は特にベティー・ニールズの作品にこだわっていた訳ではないので、ただ単にハーレクインの中の1冊という感覚で買いました。
 
ヒロインのサファーはロンドンの病院で婦人外科病棟の師長をしていましたが、恋人のアンドルーとの恋に破れ、医者である伯父にスコットランドである婦人の専属看護師にならないかと持ちかけられ、それに飛びつきます。ところが、現地へ赴く途中でガス欠で車が止まってしまい立ち往生していると通りがかりの男性が助けてくれるのですが、彼の態度の横柄さに腹を立てるサファー。実は彼はサファーが看護することになっている婦人の息子で、医者で、オランダ人で、男爵であるロルフだったのです。
 
この作品は原題が示すとおり、かなりもつれています。お互いに愛し合っているのにもかかわらず、ロルフはサファーが昔の恋人アンドルーを忘れられないでいると思っているし、サファーはロルフに嫌われていると思っているし、ヒーローの妹アントニアは、アンドルーに熱を上げるし……。とにかく意思の疎通があるんだかないんだか、二人の会話を読んでいると、何でこうなるの?と首を傾げたくなります。まあ、最初の出会いでつまずいてしまったことが原因なんですけど。それと、タイミングの問題かな?
 
ニールズの作品では美人のヒロインと、平凡な顔立ちのヒロインがだいたい半々くらいの割合で登場しますが、美人のヒロインでも、それを鼻に掛けたり、自信満々に迫っていくヒロインはまずいないですね。どんなに美人でも、ヒーローに愛されているという確信が持てなくて悶々とする、というパターンがほとんどです。これは、ニールズがそういうヒロインに固執しているからなのか(私もそういうヒロインが好きです)、それとも、実際にどんなに美しくても恋をすると不安になるものだからなのか……。美人になったことがないのでよくわかりません。でも、サファーも明らかに美人だけどロルフに対しては全く自信が持てない。
 
実は、この作品はあまり読み返すことのない作品でした。つまり、それほど気に入った作品ではないということです。全体の8割~9割はよかったんだけど、最後の方でサファーとアンドルーの仲を誤解して嫉妬したロルフが、サファーを自分の家から追い出すシーンがあって、その様子があまりにも冷酷で……。私はヒロインがヒーローに酷い仕打ちをされるという話が苦手、というか、好きではありません。だからしばらくずっとお蔵入りだったんですが、先日読み返してみて、ロルフの心情がわかっている分、それほど酷い話ではなかったかも、と思わなくもないかなと思いました(すごくあやふやですが)。
 
どんなにもつれていても、最後には丸く収まる、そしてこれから先もずっとこの2人は幸せに暮らすだろうと思わせてくれたラストシーンがあればこそ、救われるお話なのでした。
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HN:
Mrs Green
年齢:
58
HP:
性別:
非公開
誕生日:
1965/07/23
職業:
主婦
趣味:
ありすぎて書ません
自己紹介:
夫と子供2人の専業主婦です。
宮崎生まれで、現在沖縄に住んでいます。
青い海も好きですが、それよりふるさとの緑の山々が恋しい……。
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