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翡翠館 庭園

デザインを替えてみました。少しは読みやすくなったかも。前のデザインの方が雰囲気はよかったんですが…… イギリスのロマンス小説の作家、ベティー・ニールズの紹介をしていきます。独断と偏見と妄想にもとづくブログです。どうかご容赦を……。
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幸せをさがして

幸せをさがして(原題:The Promise of Happiness 初版:1979年)

ヒロイン:レベッカ(ベッキー)・ソーンダース(看護師)
ヒーロー:ティーレ・ラウケマ・ファン・デン・エック(医師 オランダ人)

 ニールズの作品って、以前も書いたことがありますが、秋に始まってクリスマスか新年にクライマックスをむかえる作品が多いような気がします。夏なんだから、夏の季節の作品を……と思うものの、なかなかピンとこなくて、ブログを書くのに結局冬の作品を選んでしまうことがしばしば……。でもよくよく考えればあるんですよね。この「幸せをさがして」も夏の作品です。

 ヒロインのレベッカ(ベッキー)は以前「誰が一番貧乏か」のテーマで書いた時、1.2を争う貧乏人として書きましたが、本当に彼女は貧乏だし、それに境遇も過酷。不幸せなヒロインのパターンの一つ、「継母および、その連れ子に苛められる」の典型ともいえる境遇で、かわいがっている犬と猫を人質、いや、犬質、猫質にとられ、小遣いさえも与えられないままこき使われ、とうとう我慢できなくなって家出したところを、ティーレに拾われます。雨の中、濡れそぼって歩いているベッキーを通りかかったティーレが車に乗せたのが2人の出会いですから、文字通り拾われたんです。

 ティーレは何でも自分の思い通りに行動するという傲慢な一面を持っていますが、それでも非常に親切な人間であることには違いなく、ベッキーを母親付の看護師として雇い、ノルウェーまでの旅に付き添わせ、その間、二匹の動物たちを引き取ってオランダで世話をして(実際に世話をしたのはもちろん彼の使用人たち)くれて、母親の看護が必要なくなると、ベッキーに仕事と住むところを世話してあげます。この場合、ベッキーが美人だったらそこまでの親切もわからないではないのですが、ベッキーはごくごく平凡な顔立ちで、しかも極度に痩せていて、決して魅力的な女性ではありません。彼自身、母親や妹にベッキーのことを「痩せすぎの鼠」とか、「魅力を感じない」とかはっきり言ってますから、そうだとしたら、そのボランティア精神には頭が下がります。まあ、それも男爵で大金持ちの人間であるからこそできる余裕の行動なのでしょうか。

 さて、そんなふうにベッキーを酷評していたティーレが、彼女の世話を焼いているうちに、いつの間にか彼女にに興味を持ち、次第に愛するようになっていきます。ベッキーの方は本当は出会った時から彼に恋をし始めているのですが、それに気づくのはずいぶん後になってからのことで、それに気が付いた瞬間、彼女は絶望の淵に立たされます。「こんなことは月に恋するようなものだわ!」
 
 実際に、ベッキーとティーレは境遇的に天と地ほども離れていますが、ニールズの作品の中では、家柄とか環境的に釣り合っていると思われるカップルは私が読んだ範囲では1作品にしか出て来ません。ほとんどのカップルは、言うなれば身分違い。でも、ハンサムでお金持ちのヒーローが貧しくて美人ではないヒロインと恋に落ちる話は山ほどあります。それがロマンス小説だから当然と言えば当然ですが、でもよくよく考えると不思議じゃありませんか?容姿も家柄も財産にも恵まれたヒーロなら、どんな高スペックの女性でも振り向かせることができるし、口説くことも出来るし、そして確実に手に入れることも出来る。なのになぜほとんど何も持っていないようなヒロインを愛するのか。ほとんどの作品では、どうしてヒーローがヒロインを好きになったのかという説明はなされていないような気がしますが、この作品にはそのヒントになるようなことが書かれてありました。

 「美しさはいろいろな種類がある。君は森の奥にある小さな池を見たことがあるかい?それは素晴らしく美しいが、少しも華やかなところはない。ただ平穏で、静かなだけだ。しかし、途方もなく人をひきつける」とティーレはベッキーに言います。ああ、なるほど、そういうことか。と納得しましたが、悲しいかな、彼の次のセリフの意味がよくわからないのです。「美とは幸福の約束にほかならない」……これがこの作品の原題なんですけどね……。どういう意味なんだろう……?

 でもまあ、要するに、人間は外見ではなくて、心根なのだということなんですね。でも、その論理でいくと、美しいヒロインが、貧乏でハンサムでもない男性と恋に落ちるというロマンスがあってもいいと思いますが、それはそれ、やっぱり読んでる方としては、ヒーローはハンサムに越したことはないと思うのは私だけでしょうか。
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年齢:
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非公開
誕生日:
1965/07/23
職業:
主婦
趣味:
ありすぎて書ません
自己紹介:
夫と子供2人の専業主婦です。
宮崎生まれで、現在沖縄に住んでいます。
青い海も好きですが、それよりふるさとの緑の山々が恋しい……。
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