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翡翠館 庭園

デザインを替えてみました。少しは読みやすくなったかも。前のデザインの方が雰囲気はよかったんですが…… イギリスのロマンス小説の作家、ベティー・ニールズの紹介をしていきます。独断と偏見と妄想にもとづくブログです。どうかご容赦を……。
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運河の街

運河の街(原題:The Fateful Bargain、初版:1989年)

ヒロイン:エミリー・グレンフェル(看護学生)
ヒーロー:セバスチャン・ファン・テックス(医師、オランダ人)

 これは最初に英文で読んで、それからどうしても日本語で読みたくて買った本、そう、私のお気に入りの一冊です。
 エミリーは数年前に母親を亡くし、看護師になるために見習い看護師としてロンドンの病院で働いています。リウマチのために歩けなくなった父親の手術費用を貯めようと、切り詰めた生活をしていて、容姿も平凡で、周囲の男性からは感じのいい子と見られていても、デートに誘われることなどほとんどなく、ひたすら地味な生活を送っている……、そんな時、出会ったのがオランダからエミリーの働く病院にやってきたセバスチャンです。
 普通なら、セバスチャンのような偉い顧問医がエミリーのような平凡な看護学生を気に掛けることはないのですが、セバスチャンにはある目的があり、その目的のためにエミリーに近づいていきます。それは、ポリオを患って以来、足が動かなくなった彼の妹の看護(看護というか、励まして、歩くための練習を続けさせるため励ます)をエミリーに頼むということでした。その代わりに、彼はエミリーの父親が歩けるようになるための手術をする(経費の一切をセバスチャンが負担した上で)という、ある意味、取引を申し出るのです。看護学校での訓練期間があと1年残っているエミリーは、訓練が中断されることを不満に思いますが、それでも、父親の足が元通りになるのなら、しかも費用がかからないというのなら、こんないい条件を飲まない手はありません。エミリーはセバスチャンの妹の看護を引き受け、オランダに渡ります。

 話は、オランダの小都市デルフトを舞台にして、淡々と進んでいきます。エミリーがセバスチャンの屋敷を物色していた窃盗犯に詰め寄り、殴られ気絶するという事件が起こりますが、それ以外はルシーリア(根は素直ないい娘なんだけど、超わがままになる時がある)にどうリハビリをさせるかという事と、セバスチャンが連れてきた友人の弟ディルクとルシーリアの恋の芽生えが中心で、あとは聖ニコラス祭りやクリスマス、新年などのオランダの風習が紹介されていて、肝心のエミリーとセバスチャンの関係は全くと言っていいほど進展しません。エミリーはルシーリアと話をしている途中で、自分がセバスチャンに恋をしていることに気が付きますが、自分と彼とでは境遇が違い過ぎると最初からその恋をきっぱり諦めようとするし、セバスチャンもオランダに戻ってから次第にエミリーから距離を置きはじめ、エミリーが強盗に襲われてからはますますよそよそしくなって行くのです。

 これは好みの問題なんですが、私は勝気な女性より、控えめな女性の方が好きだし、自分の気持ちに正直に行動する女性より、思慮深くていろいろなことを考えた挙句、自分から諦めてしまうような女性の方が好きです。今の社会では、明らかに「負け組」に入れられてしまうであろうとわかっていても。
 自分に自信を持っていて、欲しいものを手に入れるためにはどんな努力も惜しまない、そんな人しか人生の勝利者になれないような今の世の中で(もちろん、そんな逞しい人たちの努力や行動力には心から敬意を払います)、自慢できるものは何一つ持っていなくて、好きになった男の人もすぐに諦めてしまうような女性でも、ちゃんとその優しい心根をわかってくれて、愛してくれる王子様のような最高の男性が現れる。現実にはほとんどありえない、そんなおとぎ話がちりばめられているのがニールズのロマンス小説で、それが私を引き付けるのであり、それが私の癒しになっているのです。

 だから、エミリーはそんなニールズ作品のヒロインの代表選手と言っていいでしょう。そして、セバスチャンはエミリーの父親に最後の手術をした後、エミリーを捕まえて言うのです「初めて会った時から君を愛していた」と。現実では「ありえねー」と思ってしまう設定でも、いや、もしかしたら、この世の中に一つ二つはあるかもしれない。でも、もしなくても大丈夫。ニールズの作品があるからね。

 

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HN:
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誕生日:
1965/07/23
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主婦
趣味:
ありすぎて書ません
自己紹介:
夫と子供2人の専業主婦です。
宮崎生まれで、現在沖縄に住んでいます。
青い海も好きですが、それよりふるさとの緑の山々が恋しい……。
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