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翡翠館 庭園

デザインを替えてみました。少しは読みやすくなったかも。前のデザインの方が雰囲気はよかったんですが…… イギリスのロマンス小説の作家、ベティー・ニールズの紹介をしていきます。独断と偏見と妄想にもとづくブログです。どうかご容赦を……。
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ニールズ作品のタイトルについて

ニールズ作品のタイトルについて
 
 ニールズの洋書も読んでみようと思い立った結果として、作品の英文タイトルと日本語タイトルを比較するようになりました(英文タイトルと日本語タイトルを対応させておかないと日本語訳で既に読んだ洋書を注文する羽目になりますから)。
 ニールズのつけたタイトルはわりと、そのまんま、といった感じのものが多いのですが、これを日本語訳する時に、翻訳者や編集者の苦労がしのばれます。
 
 まず、ほぼ英文タイトルどおりのもの
  A Star Looks Down    星は見ている
  Roses for Christmas   聖夜には薔薇を
  Roses and Champagne   薔薇とシャンパン
  A Happy Meeting     幸せな出会い …………などなど
 
 次に、そのまんまではないにしても大体あってるかな、と思うもの
  Cruise to a Wedding   幸せへの航海
  An Apple from Eve    禁断の林檎
  A Kiss for Julie     とっておきのキス …………などなど
 
 英文のタイトルより、かえってわかりやすいと思うもの
  Discovering Daisy    デイジーの小さな願い
  Heaven Round the Corner ノルウェーに咲いた恋
  Year's Happy Ending   教授はそばかすがお好き …………などなど
 
 どの作品につけてもOKなんじゃないかと思うもの
  A Christmas Wish     忘れがたき面影
  Marrying Mary       ドクターと私
  Philomena's Miracle    ドクターは御曹子   …………などなど
 
 日本語に訳して、日本語の表紙、背表紙をつけて書店に並べるわけですから、私のようなニールズフリークの人間は別として、まず一般の読者に手にとって貰わなければ話にならない。だからタイトルはとても重要だとお思います。
 日本語訳では「忘れえぬ思い」として出版された作品の原題は“Pineapple Girl”でして、このまま訳して「パイナップル・ガール」と背表紙つけてハーレクインコーナーに並べたとして、果たして売れるかどうか確かに疑問ですよね。「大聖堂のある街」も、原題は“When Two Paths Meet”で、「二つの道が出会うとき」というタイトルよりは「大聖堂のある街」のほうが叙情的です。
 最近では洋画のタイトルでも、原題そのままをカタカナ表記にして日本で上映するのが主流になってますが、本当にタイトルを日本語に訳すのって大変ですね。
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夢の先には

夢の先には 原題:Wish with The Candle 初版:1972年
 
 ヒロイン:エマ・ヘイスティングス(看護師)
 ヒーロー:ユスティン・テイリンゲン(医師、オランダ人)
 
 
 ベティ・ニールズに嵌り始めて2年になります。最初の頃は古本屋をあさってニールズの作品を集めていたのですが、そのうち手に入るものはほとんど読みつくしてしまいました。「でも、読みたい!全部で130作品以上あるんだもの!」と思って手を出したのがペーパーバック、つまり洋書です。最初は読み終わるんだろうかと自分でも半信半疑でしたが、じっくり時間をかければ読めるものですね。しかも、邦訳を読んでいるのと同じくらい感情移入できるし、感動も出来る。というわけで、ネットでニールズ作品の洋書を新刊、古本買い集め、今まで洋書で25冊くらい読みました。
 洋書で読む欠点は唯一時間がかかるということで、つまり、読み終わったあと、読み返すことがなかなか難しいと言うことです。読み返すのにも同じくらい時間がかかる(大体1作品1~週間かかる)と思うと読み返すのも億劫で……。でも、作品の中にはすごく気に入ったものがあって、どうしても読み返したい、と思うものは和書で探して可能な限り手に入れています。つまり、ここまでするのはかなり気に入った作品と言うことです。
 
 さて、前置きが長くなりましたが、これほど気に入った作品のひとつがこの「夢の先には」です。
 ヒロインのエマは数年前に父親を亡くし、看護婦として働きながら母親の生活と妹の医学校での勉学を支えているしっかりもので、美人ではないけれど仕事が出来て友人も多く、みんなに慕われている女性です。
 エマとヒーローであるユスティンとの出会いは、エマが母親とオランダ旅行をしていた時、車線を間違えてユスティンの車と事故を起こしたことから始まります。もう一度彼に会いたいと思いつつ、旅先での出会いだし、もう2度と会うこともあるまいと残念に思ったエマでしたが、本当にその通りならここで物語りは終わってしまいます。
 その後、エマがイギリスに帰り、病院での勤務を始めた矢先、当のユスティンが2ヶ月の期限付きでエマの勤める病院に外科医としてやってきました。さあ、ここから2人の恋の物語が始まります。
 実は、2人は出会った瞬間、お互いに恋に落ちたのですが、容姿に自信がもてない上に恋に晩熟のエマはユスティンが自分に恋をしているなんて夢にも思いません。そこでユスティンはエマの母親や妹、その他病院の同僚たちを巻き込んみながら、さりげなく、さりげなーくエマにアプローチしていくのですが……。
 ユスティンは40歳。ニールズの作品の中でも年齢高めの方ですが、そのおかげか、彼はとても大人で、見ていてとても安心できるヒーローの1人です。本当に優しい……。人それぞれ好みもあると思いますが、私はこういうヒーローが好きだなあ。でも、彼が大人なのは、ただ彼が40歳だからではなく、彼が人に配慮が出来る思慮深い男性だからであって、40歳といっても精神的に子供のままの男性は世の中にいっぱいいますけどね。
 年齢はさておき、こういう大人の男性に愛されるのって、幸せだろうなあと思うのですが……。ただ、こういった大人の男性は、自分のことしか考えなず、ただ庇護されることを望むような精神的に子供の女性は選ばないのです(最終的には)。ニールズの作品を読んでいると、つくづくそう思います。
 そう、エマのように、恋の手管は知らないけれど、しっかり地に足をつけて一生懸命生きている、そんな女性こそ、ユスティンのような男性に愛されて然るべきなんだなあと思います。
 

小さな愛の願い

 小さな愛の願い 原題:Only By Chance 初版:1996年
 
ヒロイン:ヘンリエッタ・クーパー(マナーハウスガイド)
ヒーロー:アダム・ロス=ピット(医師、イギリス人)
 
 この話も好きな話です。以前「誰が一番貧乏か」というタイトルで書いた時に、多分この作品のヒロインが一番貧乏なのでは、と書きました。後で色々な作品を読み返してみて、彼女と同じように貧乏なヒロインはたくさんいるということに気が付きましたが、それでも、このヘンリエッタが貧乏であることは間違いないと思います。

ヘンリエッタは幼い時に両親をなくし、祖父母に育てられましたが、彼女が6歳になろうとするとき、祖母が亡くなり、彼女のことを面倒みきれなくなった祖父によって孤児院に入れられます。孤児院は18歳までしかいられないところですが、その後3年ほど、子供たちに勉強を教えながらとどまっていましたが、孤児院の所長が代わった時に孤児院を追い出されて以来、ずっと一人で細々と暮らしていました。
 仕事は2つ掛け持ちしていますが、そのどちらも正規雇用ではなく、いつ首になってもおかしくない不安定なもので(実際、ひどい流感にかかった時に二つとも解雇されてしまいます)収入も僅かなのに、希望を失わず、明るく健気に生きている姿に、ほとんど涙……。

仕事を2つ同時に失い、おまけに入院している間に住んでいたアパートまで他人に貸し出されてしまい、住むところも無くなったヘンリエッタに、彼女が勤めいていた病院の医師、アダムが救いの手を差し伸べます。彼の知り合いがマナーハウスの公開の日数を増やすためにスタッフの増員が必要になったという話を聞き、アダムはヘンリエッタを紹介したのです。
 それ以降、ヘンリエッタの生活は今までとは全く違ったもの(かなりよい方向に)になり、ヘンリエッタは忙しく働きながら充実した毎日を送ることになりますが、心情的にはかなり色々あるのです。
 まず、全くつりあわないとわかっていながらアダムに恋をする。自分の雇い主、サー・ピーターの甥のマイクがちょっかいを出してくる。アダムと結婚しようと狙っているはデオドラは美人だけど超我儘で高飛車。アダムは資産家で立派な家を二つも持ち、医学会でも高く評価されて、おまけにハンサム。お金も身寄りも専門的な技術も何も持っていないヘンリエッタは、彼に恋をしていると認識した瞬間に彼のことを諦めます。「もちろんこれは秘密にしなければならない。なんとか工夫して彼に会わないようにする必要がある」と言うわけで、彼とのささやかな思いを胸に生きていこうとするわけです。泣けるんですよね。こんな女の子見てると……。
 休暇でマッティという老婦人の家を訪ねたとき(これもアダムの計らいなのですが)近くの牧師館の息子デヴィッドと知り合いになり、マナーハウスに戻ってきてから、彼からまた会いたいという手紙を貰います。ヘンリエッタは、アダムは手の届かない存在なので、デヴィッドと付き合ってみようかとそのときは考えますが、夜になるとそれではいけないと思うのです。「それではデヴィッドに失礼だし、アダムに取って代わることは誰にも出来ない」そして、猫のディケンズに話しかけます。「私、オールドミスになるからね」

報われないと知りつつ、一人の人に思いを寄せるとか、彼以上の人はこの世にいないと考えることは、現実的に考えれば馬鹿げてる、と思うのです。人の心は移ろうものだし、この先もっと素敵な男性に出会えるかもしれない。でも、恋をしている時って、そういうものなんですよね。ニールズのヒロインたちは大抵そうなんですが、自分がヒーローと結ばれる可能性はないと知りつつも、ヒーローの幸せを願うのです。彼が結婚する相手が、どうか彼をちゃんと世話して愛してあげて欲しい……。ニールズの作品の中によく出てくる格言で「恋と戦争は手段を選ばない」というのがありますが、どんな手を使ってでも相手と結婚しようと頑張るヒロインの恋敵たちは、結局のところヒーローを愛しているわけではないのです。もし、本人がそう思っていてもそれは間違い。本当の愛とは、心の底から相手の幸せを願うことなのではないかと思うのですけどね……。もっとも、ニールズはいつでも、その、ヒーローの幸せを、ヒロインが実現させてくれるように計らってくれます。だからこそのロマンス小説です。
 
 

愛は深く静かに


愛は深く静かに 原題:The Quiet Professor、初版1992年

ヒロイン:メガン・ロドナー(看護師)
ヒーロー:ヤケ・ファン・ベルフェルト(医師、オランダ人)
 

 これは結構好きな話です。5回くらいは読み返しているはず(私の好きな作品の度合いは読み返した回数でわかります)。

 話の筋は、「ヒロインには婚約者がいる」→「その婚約者との破局を迎える」→「かねてからヒロインを好きだったヒーローが、ヒロインの心の傷を癒し、かつ、彼女の心を射止める」というパターンで、これとよく似た話に「幻のフィアンセ」「めぐる季節の贈り物」があります。この3作品、ヒロインがみんな美人で、背が高く、ヒーローとは勤務する病院で医師と看護師という関係というところまで同じという、本当に似てるんですが、「幻のフィアンセ」はヒーローが結婚歴があって、子供がいるというところが、「めぐる季節の――」はヒロインの元婚約者がとんでもなくひどい奴だったというところが(この作品の元婚約者はそれほどひどい人ではないのです)違います。あとは、大体一緒かなあ……。ただ、ほとんど同じ話にもかかわらず、私のお気に入り度合いで言えば、どうしても「幻の――」や「めぐる――」の方に軍配が上がってしまうのは、ヒーローのヒロインに対するかかわり方のちょっとした違いのせいかなあと思います。

 いや、ヤケは素敵なヒーローですよ。原題の通り、病院内では無口でとっつきにくい教授として見られていても、本当は優しくて、ヒロインのためならどんな苦労も厭わない(ただ、それをヒロインに悟られないようにしてますが)。元婚約者のためを思って自分から身を引いたにも係わらず、ずっと彼のことを引きずってめそめそしているメガンに、「仕事をやめて環境を変えてみては」とオランダの孤児院で働くことを勧めた上、彼女が可能な限りスムーズに仕事を辞められるようにヤケは「多くの時間を割き、考えをめぐらせ、根回しをし」準備を整えます。自分の答えたくない質問は無視したり、あくまで自分の考えたことを押し通そうとするところはあっても、それはそれで頼もしい……。
 
ただ、そうして、無理やり(?)オランダにつれてきたメガンに対して、突き放すような態度を取ってしまうヤケにちょっと引っかかるんです。ヤケとしてみれば、メガンの環境を変えるにしたって、自分の目の届く所に置いておきたいと思うと言うのは理解できますが、だったら、もっと優しくしてやれば? このままでは、メガンが可哀想だ……。後半はそんな思いで読んでました。でも、まあ、彼としても、歳の差のことを考えたりして(と言っても、多分10歳くらいしか違わないはず)、苦悩はしてたみたいですが。

 余談ですが、ニールズの作品は2000年位から「ハーレクイン・イマージュ」として出版されていますが、それ以前は「ハーレクイン・ロマンス」でした。で、「ハーレクイン・ロマンス」の表紙は以前はイラストだったんですね。で、この作品の表紙を飾るヒーローとヒロインのイラストは、本当に作品のイメージどおりだなあと思っています。

 

余計な事とお思いでしょうが


 ニールズの作品を鑑賞するにあたって、意味のないこと、だとは思うのですが、ニールズの作品を古いものから新しいものまでリスアップしていて、2,3気が付いた事があるので今回はそれについて書いてみようと思います。

 まず、これは以前書いたことがあるのですが、古い作品はヒーローの心理描写がほとんどなく、新しい、つまり、ニールズにとって晩年の作品になるほど、ヒーローの心情が描かれている作品が多いということです。1990年前後を境にして、ヒーローの心理描写が多くなっているような気がします。初期の頃の作品は、ヒーローが何考えているのか、最後の最後にプローポーズするまで分からない(ま、大体分かるんですが)のですが、後期の作品になると、「デイジーの小さな願い」のユールスのようにヒーローの苦悩がありありと分かるようになっています。個人的にはどちらも好きですが。

 次に、ニールズの作品のヒーローはほとんど医者で、それはニールズの作品全体を通して変わりませんが、ヒロインの場合、1995年以降、ほとんど看護婦以外の職業になってきます。ニールズの作品を全部読んだ訳ではありませんが少なくとも、私が読んだ中では1995年以降の作品に看護婦のヒロインがいません。職業的には秘書だったり、ナニーだったり、家事手伝いだったり……。ニールズ自身、看護婦でしたが、60歳くらいで看護婦を引退し、作家生活に入ります。さすがに、引退して30年も経つと、最新の医療技術についていけなくなったからかなあとか、考えたりしますが、ヒロインがどんな職業でもニールズの作品の魅力は変わりません。むしろ、私の好きな作品は、ヒロインが看護婦でない作品の方が多いような気がします。

 最後に、これも、以前書いたことですが、初期の頃の作品には不遇な少年、青年時代をおくったヒーローが何人が出てきますが、そのあとにはほとんど出てきません。ニールズの全作品を読んだわけではありませんが、少なくとも私が読んだ範囲ではそうです。ニールズの作品のヒーローのほとんどは、不遇どころか、大勢の兄弟がいて、優しい両親がいて(父親は亡くなっているという設定の話もかなりありますが)幸せそのものの家庭に育っています。で、ほとんどの場合、長子で長男なんですよね。で、その兄弟たちもみんな良い人で……(「海辺の思い出」に出てきたヒーローの弟だけは最低でしたけど)。これって、ヒロインが不遇な環境にある場合が多いので、それと対比させるためかなあと思ったりしますが、例えば、「春を待ちわびて」や「幻のフィアンセ」やみたいに、兄弟がたくさんいて幸福な家庭のヒロインもいることだし、まあ、ヒロインの環境は千差万別ですね。

 ニールズの作品のうち、まだ半数をちょっと超えた程度しか読んでないので、あれやこれやと指摘するのもおこがましいのですが、個人的にはこういうことを考えるのは楽しいです。あと、いろんな作品の中に、他の作品のヒーロー、ヒロインが夫婦として登場している事を発見した時は思わずにんまりしてしまいます。そういう、スピンオフについては、また機会があったら書きたいと思います。

すこしだけ回り道

すこしだけ回り道 原題:A Secret Infatuation 初版:1994年

ヒロイン:ユージェニー・スペンサー(看護師)
ヒロイン:アデリク・レインマ・テル・サリス(医師・オランダ人)

 3月はとうとう1回も更新しませんでした。忙しかったから、ということにしておきましょう。
 さて、この作品は私の中では割と好きな部類に入ります。何というか、ニールズの作品のいろんな要素が詰まっている作品で(ヒーローには美人で性格の悪い婚約者がいる。ヒーローの要請でヒロインがオランダで臨時的に仕事をする。ヒーローの婚約者のに騙されて、ヒロインは自分の思いを告げることなくオランダを去り、イギリスに帰る。等等)すが、ヒロインの性格はニールズの作品のヒロインのなかでは割りと少数派に属してます。つまり、「売られた喧嘩はきっちり買います!」といった性格なんです。ユージェニーは美人ですが、彼女はそれを鼻にかけて自信満々なのではなくて、その性格は生来のもののようです。なので、全く嫌味は感じられないし、むしろ清々しい。それに、無理やりヒーローを婚約者から略奪しようとしません。アデリクが婚約者を愛していると認識した後は(間違ってるんですけどね、この点は)あっさりと身を引きます。その辺りに、ニールズの、決して超えない一線があるような気がします。

 ユージェニーはアデリク専属の看護師なので、アデリクが要請されて海外に行く時にも一緒についていきます。ポルトガルのマデイラ島では仕事が終わってから2人で観光を楽しみましたが、戦争真っ只中のボスニアへ行き、砲弾やライフル銃の音が飛び交う中手術を行うというスリリングな体験もしました。このあたり、他の作品に比べて結構ドラマティックです。イギリスの田園地方のみが舞台、という話に比べればという意味で……。

 この作品の最大の問題は、アデリクの婚約者サファイアラをどうするか、ってことですが、彼の場合、サファイアラのパーティーや観劇への誘いをことごとく断り、自分とサファイアラの生活スタイルが如何に違っているかということを認識させることで、サファイアラ自ら婚約解消を言い出すように仕向けます。結局彼女のアデリクに対する思いもその程度のものだったということですが、その程度でよかったんですよ。そうでなかったら修羅場になりますからね。
 アデリクの方から婚約解消を申し出るという方法もあったんでしょうけど、その場合だとサファイアラが同意してくれたかどうか……たぶんしなかったでしょうね。
 ヒーローにはすでに婚約者がいて……という話は結構ありますが、ヒーローたちは大体この手を使ってるみたいです。こんな方法は卑怯だと考える人もいるかもしれないけど、待つことさえできれは、この方法が誰も傷つけずに住む方法ではないかと……。もちろん、婚約者がヒーローの財産と地位と名誉だけにしがみついている場合に限りますが……。

Three For A Wedding

Three For A Wedding(邦訳されているかどうか不明)初版:1973年
ヒロイン:Fhoebe Brook(看護師)
ヒーロー:Lucius vav Someren(医師 オランダ人)

 面白かったなあ。
 ニールズの作品を70冊も読んでいれば、大体プロットが似た話がたくさん出てくるんですが、これはちょっと他の作品と違います。何が違うかって、ヒロインがオランダに行くことになた理由です。ヒロインがオランダに行く話しはたーくさん(全作品の半分以上がそうだと思われます)ありますが、大体はヒーローに請われてオランダの病院で働くとか、誰かの看護を頼みたいとかそう言うことなんですが、Fhoebeの場合は数ヶ月オランダに派遣されることになっていたSybilの身代わりとなってオランダに行くことになります。Sybilが、「恋人とすぐに結婚したいから、お姉ちゃん、私の変わりに行って頂戴!」というわけです。色々な手続きや手配がすんだ後のことなので、Fhoebeは自分をSybilと偽ってオランダに行かなければなりません。Sybilの「私をオランダに連れて行くことになっている医師はぼんやりした人だし、私の顔を良く見てなかったし、私達はとてもよく似た姉妹だからばれっこないって」という言葉を信じてオランダ行きを決心したFhoebeですが、実は、イギリスの病院で彼に最初に会った瞬間、ばれてました。
 つまり、そのぼんやりした医師Luciusは、彼女がSybilではないと承知の上でオランダまで連れて行き、オランダに上陸したとたん、彼女のことをFhoebeと呼び、彼女を愕然とさせます。Luciusは全然ぼんやりした人ではなかったんですね。

 さて、このLucius、独身ですが、事故で死んだ友人の息子、Paul(9歳)を引き取って養子として育てています。でも、彼は仕事で家にいないことが多く、PaulにはMaureenという家庭教師がいて、この家庭教師がとんでもない女で……。
 本当にとんでもない女なんです。Luciusの前では有能な家庭教師を装いながら、Luciusが留守の間に彼の家に友人を招いてパーティーするなんてまだ可愛いほうで、Paulに「FhoebeはあなたからLuciusを奪おうとしている」と吹き込んだり、LuciusとFhoebeが誕生日にPaulに贈った子犬を虐待したり……。ところが、こういうMaureenのひどい裏の面をLuciusは全く気付かない。変だ、変だよ。Fhoebeのことだったら、どんなに些細な感情の乱れも気が付くのに!
 でも、一度Paulの信頼を得たら、MaureenなんてFhoebeの敵ではありません。色々ありましたが、Maureenに吹き込まれたLuciusの誤解もPaulが解いてくれてめでたくハッピーエンド。きっとFhoebeとLuciusとPaulと幸せな家庭を築くのでしょうね。そして、いずれ生まれてくる子どもも加わって……。Paulは頼もしいお兄ちゃんになりそうです。

 ところで、このタイトルですが、これは作品のはじめの方で、FhoebeがSybilに自分に代わってオランダに行ってと説得された時、近くに3羽のカササギがいて、Sybilが“One for anger ,two for mirth three for wedding"といった台詞から来ていますが、イギリスでは目にしたカササギの数が幸福や不幸の予兆とつながっているという伝承があるらしいのです。Sybilはたまたま目にした3羽のカササギが自分の結婚の予兆だと思ったのかもしれませんが、実はFhoebeの予兆でもあったわけですね。

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HN:
Mrs Green
年齢:
58
HP:
性別:
非公開
誕生日:
1965/07/23
職業:
主婦
趣味:
ありすぎて書ません
自己紹介:
夫と子供2人の専業主婦です。
宮崎生まれで、現在沖縄に住んでいます。
青い海も好きですが、それよりふるさとの緑の山々が恋しい……。
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