翡翠館 庭園
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デイジーの小さな願い
デイジーの小さな願い 原題:Discovering Daisy 初版:1999年
ヒロイン:デイジー・ギラード(骨董品店の娘)
ヒーロー:ユールス・デル・ホイズマ(医師、オランダ人)
1999年の作品なので、ニールズとしては晩年の作品と言えます。ニールズの作品をまだ全部読んだわけではないけど、1969年に彼女がロマンス小説を書き始めてから2001年に亡くなるまでの作品を年代順に並べてみたとき、あることに気が付きました。それは、後年の作品になるほど、ヒーローの心情がよく表現されていると言うことです。逆に言えば、初期の頃の作品では、ヒーローの心理描写がほとんどなく、もう、最後の最後までヒーローが何考えているのか全くわからないと言うパターンが多い。
この作品や、2000年に出版された「片思いの日々」や、2001年に出版された「聖夜に祈りを」等は、ヒーローの視点からの描写が結構あって、彼らがどのようにしてヒロインに惹かれていくかがよくわかるようになっています。
ヒロインのデイジーはは平凡でちょっとふくよか。自分でも男性を惹きつける魅力は持っていないと理解している分別のある娘で、ヒーローのユールスはお定まりの、医者、ハンサム、お金持ちと言うパターンで、ヘレネという婚約者がいます。2人はまず、イギリスのデヴォン州トトネスという町のホテルで出会い、次にデイジーの家近くの海岸で出会い、そして次の日デイジーの店にユールスが来て……と、2人は顔を合わせていきます。その度にお互いが気になる2人。
この話はヒロインもさることながら、ヒーローの方も切ないんです。だって、いくらデイジーを好きになっても婚約者がいるんですから。もうデイジーとは会わない、と決心するシーンなんかあって(普通、こう決心するのはヒロインがほとんどなんですが)苦悩するヒーローとして描かれています。それもこれも、ヒーローの視点による描写があってのこと。
同じようにヒーローには既に婚約者がいて……という作品に「少しだけ回り道」(1994年)とか、「あなたのいる食卓」(1987年)、「やどりぎの下のキス」(1997年)、「片思いの日々」(2000年)などがありますが、前者二つがヒーローの心理描写がないもので、あとの二つがあるものです。どちらの方が良いというわけではありません。どっちも好きです。あえて言えば、前者の方がヒロインの気持ちになってどっぷり浸れる作品で、後者は2人の心情が伝わる分、俯瞰的にストーリーが楽しめる感じでしょうか。
この作品で印象的なのは、ヒロインとヒロインの恋敵であるヒーローの婚約者が結構対比的に描かれていることで(まあ、他の作品も大なり小なりそうなんですが)、たとえば、デイジーがアンティークの専門家であるのに対して、婚約者のヘレネの家にはアンティークは一切なく、デイジーは「俗悪」だと判断します。ユールスがアフリカに行くと告げた時も、ヘレネは「そんなひどいこと!」と言って彼の仕事に理解を示さず怒り出したのに対して、デイジーは「あなたのような方を是非必要としているんでしょうね」と寂しさを押し殺して気持ちよく送り出そうとする……。ユールスが惚れないわけはないじゃありませんか。ていうか、そもそも、何でヘレネなんかと婚約したんだか。
幸い、ユールスのことを全然愛していないヘレネの襤褸が出て、めでたく婚約解消。そして彼はデイジーの元へ。ハッピーエンドは何回読んでも良いものです。
宮崎生まれで、現在沖縄に住んでいます。
青い海も好きですが、それよりふるさとの緑の山々が恋しい……。