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翡翠館 庭園

デザインを替えてみました。少しは読みやすくなったかも。前のデザインの方が雰囲気はよかったんですが…… イギリスのロマンス小説の作家、ベティー・ニールズの紹介をしていきます。独断と偏見と妄想にもとづくブログです。どうかご容赦を……。
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すこしだけ回り道

すこしだけ回り道 原題:A Secret Infatuation 初版:1994年

ヒロイン:ユージェニー・スペンサー(看護師)
ヒロイン:アデリク・レインマ・テル・サリス(医師・オランダ人)

 3月はとうとう1回も更新しませんでした。忙しかったから、ということにしておきましょう。
 さて、この作品は私の中では割と好きな部類に入ります。何というか、ニールズの作品のいろんな要素が詰まっている作品で(ヒーローには美人で性格の悪い婚約者がいる。ヒーローの要請でヒロインがオランダで臨時的に仕事をする。ヒーローの婚約者のに騙されて、ヒロインは自分の思いを告げることなくオランダを去り、イギリスに帰る。等等)すが、ヒロインの性格はニールズの作品のヒロインのなかでは割りと少数派に属してます。つまり、「売られた喧嘩はきっちり買います!」といった性格なんです。ユージェニーは美人ですが、彼女はそれを鼻にかけて自信満々なのではなくて、その性格は生来のもののようです。なので、全く嫌味は感じられないし、むしろ清々しい。それに、無理やりヒーローを婚約者から略奪しようとしません。アデリクが婚約者を愛していると認識した後は(間違ってるんですけどね、この点は)あっさりと身を引きます。その辺りに、ニールズの、決して超えない一線があるような気がします。

 ユージェニーはアデリク専属の看護師なので、アデリクが要請されて海外に行く時にも一緒についていきます。ポルトガルのマデイラ島では仕事が終わってから2人で観光を楽しみましたが、戦争真っ只中のボスニアへ行き、砲弾やライフル銃の音が飛び交う中手術を行うというスリリングな体験もしました。このあたり、他の作品に比べて結構ドラマティックです。イギリスの田園地方のみが舞台、という話に比べればという意味で……。

 この作品の最大の問題は、アデリクの婚約者サファイアラをどうするか、ってことですが、彼の場合、サファイアラのパーティーや観劇への誘いをことごとく断り、自分とサファイアラの生活スタイルが如何に違っているかということを認識させることで、サファイアラ自ら婚約解消を言い出すように仕向けます。結局彼女のアデリクに対する思いもその程度のものだったということですが、その程度でよかったんですよ。そうでなかったら修羅場になりますからね。
 アデリクの方から婚約解消を申し出るという方法もあったんでしょうけど、その場合だとサファイアラが同意してくれたかどうか……たぶんしなかったでしょうね。
 ヒーローにはすでに婚約者がいて……という話は結構ありますが、ヒーローたちは大体この手を使ってるみたいです。こんな方法は卑怯だと考える人もいるかもしれないけど、待つことさえできれは、この方法が誰も傷つけずに住む方法ではないかと……。もちろん、婚約者がヒーローの財産と地位と名誉だけにしがみついている場合に限りますが……。

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Three For A Wedding

Three For A Wedding(邦訳されているかどうか不明)初版:1973年
ヒロイン:Fhoebe Brook(看護師)
ヒーロー:Lucius vav Someren(医師 オランダ人)

 面白かったなあ。
 ニールズの作品を70冊も読んでいれば、大体プロットが似た話がたくさん出てくるんですが、これはちょっと他の作品と違います。何が違うかって、ヒロインがオランダに行くことになた理由です。ヒロインがオランダに行く話しはたーくさん(全作品の半分以上がそうだと思われます)ありますが、大体はヒーローに請われてオランダの病院で働くとか、誰かの看護を頼みたいとかそう言うことなんですが、Fhoebeの場合は数ヶ月オランダに派遣されることになっていたSybilの身代わりとなってオランダに行くことになります。Sybilが、「恋人とすぐに結婚したいから、お姉ちゃん、私の変わりに行って頂戴!」というわけです。色々な手続きや手配がすんだ後のことなので、Fhoebeは自分をSybilと偽ってオランダに行かなければなりません。Sybilの「私をオランダに連れて行くことになっている医師はぼんやりした人だし、私の顔を良く見てなかったし、私達はとてもよく似た姉妹だからばれっこないって」という言葉を信じてオランダ行きを決心したFhoebeですが、実は、イギリスの病院で彼に最初に会った瞬間、ばれてました。
 つまり、そのぼんやりした医師Luciusは、彼女がSybilではないと承知の上でオランダまで連れて行き、オランダに上陸したとたん、彼女のことをFhoebeと呼び、彼女を愕然とさせます。Luciusは全然ぼんやりした人ではなかったんですね。

 さて、このLucius、独身ですが、事故で死んだ友人の息子、Paul(9歳)を引き取って養子として育てています。でも、彼は仕事で家にいないことが多く、PaulにはMaureenという家庭教師がいて、この家庭教師がとんでもない女で……。
 本当にとんでもない女なんです。Luciusの前では有能な家庭教師を装いながら、Luciusが留守の間に彼の家に友人を招いてパーティーするなんてまだ可愛いほうで、Paulに「FhoebeはあなたからLuciusを奪おうとしている」と吹き込んだり、LuciusとFhoebeが誕生日にPaulに贈った子犬を虐待したり……。ところが、こういうMaureenのひどい裏の面をLuciusは全く気付かない。変だ、変だよ。Fhoebeのことだったら、どんなに些細な感情の乱れも気が付くのに!
 でも、一度Paulの信頼を得たら、MaureenなんてFhoebeの敵ではありません。色々ありましたが、Maureenに吹き込まれたLuciusの誤解もPaulが解いてくれてめでたくハッピーエンド。きっとFhoebeとLuciusとPaulと幸せな家庭を築くのでしょうね。そして、いずれ生まれてくる子どもも加わって……。Paulは頼もしいお兄ちゃんになりそうです。

 ところで、このタイトルですが、これは作品のはじめの方で、FhoebeがSybilに自分に代わってオランダに行ってと説得された時、近くに3羽のカササギがいて、Sybilが“One for anger ,two for mirth three for wedding"といった台詞から来ていますが、イギリスでは目にしたカササギの数が幸福や不幸の予兆とつながっているという伝承があるらしいのです。Sybilはたまたま目にした3羽のカササギが自分の結婚の予兆だと思ったのかもしれませんが、実はFhoebeの予兆でもあったわけですね。

Tulips for Augusta

Tulips for Augusta(邦訳されているかどうか不明) 初版:1971年
ヒロイン:Augusta Brown(看護師)
ヒーロー:Constantijin van Lindemann(医師、オランダ人)

 ニールズのごく初期の頃の作品ですね。この話は他の作品に比べると結構長いんですよ。そんな理由でまだ邦訳されていないのかもしれません。
 長い分、内容的に盛り沢山です。Augusataの勤める病院での2人の出会い。オランダに住むAugustaの大伯母を訪ねたときの二人の再会。Augusutaの実家近くの採石場での更なる再会……。そこで、実はConstantijinの名付け親がAugustaの実家近くに住んでいて、彼は何度も彼女の実家付近を行き来したことがある事が判明。その後、再びオランダを訪れたり、イギリスに帰って仕事を再開したら病院近くでビルの倒壊があってパニック状態になったり……。
 それらの色々な出来事の中で2人の想いは通い合っていき……、と言いたいところですが、Constantijinが本当にいろいろとAugusataの為に心を砕いてあげても、美人ではない彼女にはなかなか彼の思いは伝わりません。おまけに、彼の近くにSusanという女性がうろちょろしていてAugusataは彼の本命はSusanではないかと思っている。しかも、Constantijinは最初に出会った時に“I don't like carroty hair”(Augustaは見事な赤毛の女性です)と言ってしまっているし(後でそのことを指摘されたConstantijinは「え?そんな事言ったっけ?」という感じで流してしまいます)。まあ、つまりConstantijin本人の責任も少しはあるということですね。
 それでも、Constantijinの努力の甲斐があって、Augustaは彼に愛されていることを信じるようになり、ニールズの作品にしては珍しくラストになる前にプロポーズされ、そして彼女はそれを受け入れます。が、プロポーズの後にまだ話が続くということは、そこから先にまだ波乱が残されているということで……。
 実はConstantijinはSusanの後見人で、それ故に彼はSusanについてちょっと面倒なことを処理しなければならなくなるのですが、それについての説明をConstantijinは一切しないものだから、盗み聞きしたConstantijinとSusanの会話からAugustaの悪い妄想はとんでもない方向に……。
 最後は誤解も解けて、やっとめでたしめでたしとなるのでまあ心配することもなかったんですけどね。

 ところで、ニールズの作品を読んでいて気がついたのは、ニールズの中期以降の作品はヒーローの家庭(実家)は幸福そのものという場合がほとんどなのに、初期の頃の作品では、ヒーローが結構辛い過去を背負っていたりなんかします。Constantijinもそんな1人で、彼が16歳の時母親が亡くなって以来、父親は喪失感からConstantijinと彼の弟から離れていったそうなのです。それを知ったAugustaは……。

 うーん。この話は徹頭徹尾、Augaustaを手に入れるためのConstantijinの努力のお話だったのかもしれません。
 

聖夜に祈りを

聖夜に祈りを 原題:Always and Forever 初版:2001年

ヒロイン:アマベル・パーソンズ (B&B経営)
ヒーロー:オリヴァー・フォード(医師、イギリス人)


 もうすぐクリスマスなので、クリスマスにちなんだ話をご紹介。
実はニールズの作品って、ほとんどが秋から始まって冬にクライマックスという話か、春から始まって夏にクライマックスという話のどちらかなので、必然的にクリスマスが絡んでくる話が多いのです。

 で、クリスマスに関するもので私が好きな話の1つがこの「聖夜に祈りを」です。これは2001年に亡くなったニールズの、2001年に発行された本なので、もしかしたら遺作かもしれません。

 さっき書いたように、ニールズの話は秋に始まって冬にクライマックスという話が多いのですが、この作品の始まりは夏です。ある、夏の嵐の夜、B&Bを経営するアマベルのところに、ヒーローのオリヴァーが母親と2人で泊まりに来ることからこの話は始まります。アマベルは父親を亡くし、母親と2人暮らしだったんですが、この時点ではその母親はカナダの姉の所に行っていて、B&Bにはアマベルだけが残されています。そんなアマベルのことが、宿を出てからも何となく気になるオリヴァー。そして、彼は忙しい合間を縫うように、アマベルのところを訪れるのです。母親がカナダで再婚したと聞かされショックを受ける彼女を慰めたりなんかしますが、この時には妹のように彼女と接しています。

やがて秋になり、母親が新しい夫と一緒に帰国。新しい父親はB&Bを廃業して収益性の高い農園を作ると言い出し、アマベルが大切にしている犬と猫を虐待しようとするのに切れたアマベルは家を出て、伯母を頼ってヨークシャーに行きます。それを聞いたオリヴァーはヨークシャーまで会いに行ったり、仕事を世話したりとしているうちに……。

 オリヴァーは優しい、もう、本当に優しいヒーローで、読んでいるこっちまでが優しさに包まれているような気になるくらいです。よく、ニールズの作品の謳い文句に「穏やかな優しさに包まれます……」とかいうのがありますが、いや、もう、この作品がそれ、そのまんまなんですよ。ある種の癒しを感じます(世知辛い世の中や、日々の忙しさに疲れた人にはお勧めです)。

 でも、だからと言って、2人の恋に障害がないかといえばそうではなくて、ちゃんと恋のライバルも存在し、いろいろと2人の仲を邪魔してきますが、それがかえってオリヴァーにアマベルへの想いを掻き立てさせることになったのかもしれません。

 翻訳者の訳し方によるのかもしれませんが、アマベルがとてもかわいらしく描かれているように感じるのは私だけでしょうか。彼女は26歳で(多分そうだったとおもいます)、一人でB&Bを切り盛りできるほどしっかりした女性ですが、何となくそれよりももっと幼く感じられる所があって、そういうアマベルの可愛らしさも相まって、ほんわかした気分になる、そんな作品です。

 ちなみに、原題はAlways and Forever で、邦訳タイトルとはちょっと違うんですが、これは本当に最後のシーンで、オリヴァーにキスをされてプロポーズされたアマベルが「いつも、今みたいにキスしてくれる?」と尋ねた時、それに答えたオリバーの台詞「ああ、いつも、そしてこれからも永遠に、ダーリン」から来ていると思います。この台詞は、ニールズの作品すべてのラストに出てくるべきですよね。

 いつも、永遠に、二人がしあわせでありますように。

デイジーの小さな願い

デイジーの小さな願い 原題:Discovering Daisy 初版:1999年

ヒロイン:デイジー・ギラード(骨董品店の娘)
ヒーロー:ユールス・デル・ホイズマ(医師、オランダ人)

 1999年の作品なので、ニールズとしては晩年の作品と言えます。ニールズの作品をまだ全部読んだわけではないけど、1969年に彼女がロマンス小説を書き始めてから2001年に亡くなるまでの作品を年代順に並べてみたとき、あることに気が付きました。それは、後年の作品になるほど、ヒーローの心情がよく表現されていると言うことです。逆に言えば、初期の頃の作品では、ヒーローの心理描写がほとんどなく、もう、最後の最後までヒーローが何考えているのか全くわからないと言うパターンが多い。
 この作品や、2000年に出版された「片思いの日々」や、2001年に出版された「聖夜に祈りを」等は、ヒーローの視点からの描写が結構あって、彼らがどのようにしてヒロインに惹かれていくかがよくわかるようになっています。

 ヒロインのデイジーはは平凡でちょっとふくよか。自分でも男性を惹きつける魅力は持っていないと理解している分別のある娘で、ヒーローのユールスはお定まりの、医者、ハンサム、お金持ちと言うパターンで、ヘレネという婚約者がいます。2人はまず、イギリスのデヴォン州トトネスという町のホテルで出会い、次にデイジーの家近くの海岸で出会い、そして次の日デイジーの店にユールスが来て……と、2人は顔を合わせていきます。その度にお互いが気になる2人。
 この話はヒロインもさることながら、ヒーローの方も切ないんです。だって、いくらデイジーを好きになっても婚約者がいるんですから。もうデイジーとは会わない、と決心するシーンなんかあって(普通、こう決心するのはヒロインがほとんどなんですが)苦悩するヒーローとして描かれています。それもこれも、ヒーローの視点による描写があってのこと。
 同じようにヒーローには既に婚約者がいて……という作品に「少しだけ回り道」(1994年)とか、「あなたのいる食卓」(1987年)、「やどりぎの下のキス」(1997年)、「片思いの日々」(2000年)などがありますが、前者二つがヒーローの心理描写がないもので、あとの二つがあるものです。どちらの方が良いというわけではありません。どっちも好きです。あえて言えば、前者の方がヒロインの気持ちになってどっぷり浸れる作品で、後者は2人の心情が伝わる分、俯瞰的にストーリーが楽しめる感じでしょうか。

 この作品で印象的なのは、ヒロインとヒロインの恋敵であるヒーローの婚約者が結構対比的に描かれていることで(まあ、他の作品も大なり小なりそうなんですが)、たとえば、デイジーがアンティークの専門家であるのに対して、婚約者のヘレネの家にはアンティークは一切なく、デイジーは「俗悪」だと判断します。ユールスがアフリカに行くと告げた時も、ヘレネは「そんなひどいこと!」と言って彼の仕事に理解を示さず怒り出したのに対して、デイジーは「あなたのような方を是非必要としているんでしょうね」と寂しさを押し殺して気持ちよく送り出そうとする……。ユールスが惚れないわけはないじゃありませんか。ていうか、そもそも、何でヘレネなんかと婚約したんだか。

 幸い、ユールスのことを全然愛していないヘレネの襤褸が出て、めでたく婚約解消。そして彼はデイジーの元へ。ハッピーエンドは何回読んでも良いものです。

春を待ちわびて

春を待ちわびて 原題:Last April Fair 初版:1980
 
ヒロイン:フィリダ・クレスウェル(看護師)
ヒーロー:ピーテル・ファン・シッタート(医師、オランダ人)
 
 ニールズの作品のヒーローたちはそれぞれに一癖も二癖もある人物が多いんですが、もう本当にただただ優しいヒーローが何人かいます。「忘れがたき面影」のハソ、「めぐる季節の贈り物」のジェームズ、「聖夜に祈りを」のオリバーなどですね。で、この作品のピーテルもそんな、優しい優しいヒーローのうちの1人です。
 
 ヒロインのフィリダは看護婦で、白血病の女の子、ガビーに付き添って、マデイラ島とカナリア諸島をめぐるクルーズに参加することになりますが、途中でガビーの具合が悪くなり、クルーズを続けると言い張るガビーの両親を船に残し、フィリダとガビーはマデイラ島で下船。最悪なことに、そこでガビーは亡くなってしまい、ガビーの遺体を引き取りにきた両親に責められた上に、僅かな所持金しかないのにマデイラ島に置き去りにされます。今日泊まる所の当てもないまま途方に暮れるフィリダに手を差し伸べたのがオランダ人の医師ピーテル・ファン・シッタートでした。
 ピーテルは最初、フィリダたちが泊まったホテルの宿泊客で、彼女の容態が急変した時も病院に連れて行ったあげたりと手助けしてくれた人ですが、フィリダが置き去りにされた事情を語ると、マデイラ島に住む友人の家にフィリダも一緒に招待してくれます。友人夫妻もとてもいい人で、夢のような1週間を過ごした後、帰国。ピーテルともこれでお別れ、と思いきや、そうは問屋がおろさない。
 
 この作品も前回紹介した「猫と紅茶とあの人と」と同じように、ヒロインを気に入ってしまったヒーローが、なんだかんだと理由をつけて、ヒロインをオランダに引っ張ってくると言うお話です。この作品の場合、だしに使われたのはフィリダの弟と、母親で、「お母さんと弟さんをオランダに招待したから君もどうだい?」って感じでまるでフィリダはおまけみたいな言い方ですが、本命はフィリダだということは見え見え……。
 
 断りきれなくてオランダに行ったフィリダですが、オランダに着いてみると、ピーテルの幼馴染のマレーナが彼にやたらと絡んでくるし、弟のウィリーの悪戯で嵐の中ヨットで漂流する羽目にはなるし、自分がピーテルを愛していることに気がつくし、航海に出る前に振ったはずのフィリダの元恋人(ボーイフレンドか?)が登場してきて、ピーテルが2人の仲を取持とうとするし、もう、感情的にはぐちゃぐちゃ……。ずっと前からピーテルに愛されているのに、それに全然気付かないフィリダ。最後にハッピーエンドになりますが、フィリダの母親の「フィリーは……あの子ときたら本当に鈍いんだから」と言う台詞はほんと実感こもってましたね。
 
 この作品でいいなあと思ったのは、このフィリダの母親です。余計な口出しはしないけど、しっかり目を光らせて状況を把握して本当に必要な時にさりげなく手を打つ。母親の愛情ってこんなふうに発揮されるんだなあと思いました。私もこんな母親になりたいな。
 
 
 

猫と紅茶とあの人と

猫と紅茶とあの人と 原題:The Course of True Love 初版:1988年
 
ヒロイン:クレアラベル・ブラウン(物理療法士)
ヒーロー:マルク・ファン・ボーゼル(医師、オランダ人)
 
 この作品は私が読んだニールズの作品の中でもっとも軽快な作品の1つで、読みながら「ベティー・ニールズがラブコメ書いてる……」と思ってしまいました。
この作品では全編を通して深刻な要素がほとんどありません。ハプニングがないわけではないんです。マルクがクレアラベルを彼女の実家に送っていく途中で偶然事故現場に遭遇し、その時にアルマという女の子に出会い、マルクが彼女に付き纏われるという事態になります。でも、マルクにとってこれはまさしく渡りに舟で、アルマを諦めさせるためにクレアラベルに婚約者の振りをしてくれないかと頼んで、彼女とちゃっかりデートを重ねます。クレアラベルの働く物理療法科が爆破され、当分の間閉鎖されることになった事件も、彼女をオランダに連れて帰るいい口実になってしまいます。
最初、彼はクレアラベルの上司のミスター・シャターが休暇の間の代理で来ただけのはずが、その期間が終わっても、ミスター・シャターと相談したい事案があるから、とか診たい患者がいるからと理由をつけてちょくちょくイギリスにやってくる。そして、クレアラベルの部屋のドアを激しくノックし、彼女に不意打ちを食らわせるのです。
つまり、この話は、クレアラベルに一目惚れしたマルクが、彼女を自分のものにするために如何に頑張ったか、を描いた作品とも言えますね。
クレアラベルは美人で、おとなしいとはいえないタイプなので、2人の会話は辛辣な台詞の応酬になることが多いのですが、それも読んでいる人間からすれば楽しめてしまう。
ニールズの作品のヒーローたちはみんなそうなんですが、彼らはあからさまにヒロイン達を口説いたりしません。自分を愛するように巧に仕向けるんです。そのためのには本当に骨惜しみしません。マルクもクレアラベルに会うためだけに忙しい仕事の合間を縫って海を渡ってくる。クレアラベルはマルクがオランダに帰るたびに、もう会うことはない、と思うのに、激しいノックの音にドアを開けて「オランダにいるはずじゃあ……」と仰天します。出会った時は何と傲慢な人だろう、と憤慨するものの、何度も会ったりデートをしているうちにクレアラベルの心はだんだんマルクに傾いていって……。まあ、マルクの作戦勝ってところでしょうか。
こんな、明るく軽やかな作品には「2人のパラダイス」もありますが、私はこの作品のほうが好きですね。
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HN:
Mrs Green
年齢:
58
HP:
性別:
非公開
誕生日:
1965/07/23
職業:
主婦
趣味:
ありすぎて書ません
自己紹介:
夫と子供2人の専業主婦です。
宮崎生まれで、現在沖縄に住んでいます。
青い海も好きですが、それよりふるさとの緑の山々が恋しい……。
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