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翡翠館 庭園

デザインを替えてみました。少しは読みやすくなったかも。前のデザインの方が雰囲気はよかったんですが…… イギリスのロマンス小説の作家、ベティー・ニールズの紹介をしていきます。独断と偏見と妄想にもとづくブログです。どうかご容赦を……。
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すみません、訂正します

12月25日にUPした「やどり木の下のキス」で、ヒロインの相性を「エイミー」と書いてしまいましたが、正しくは「エミー」です。申し訳ありません。訂正します。UPした分も訂正しておきました。
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やどりぎの下のキス

やどりぎの下のキス(原題:The Mistletoe Kiss、初版1997年)
 
ヒロイン:アーメントルード(愛称エミー)・フォスター(電話交換手)
ヒーロー:ルエルド・テル・メノルト(医師、オランダ人)
 
 今日はクリスマス、ということで、クリスマスにちなんだ作品を選びました。
 この話好きなんですよー。でも、最初に読んだ時はそうでもなかったんです。ヒロインの性格はいいんだけど、ヒーローのルエルドの印象がいまいちだなあと思っていたのですが、もう一度読み返してはまりました。
 確かに、物語の始めの方では、ルエルドはエミーに意地悪なことばかり言ってきます。エミーはルエルドが顧問をしている病院で電話交換手をしていますが、彼はエミーと出会って以来、交換室を通りかかるたびに彼女に話しかけてくるようになります。夜勤の眠気覚ましに持ってきた編み物を皮肉ったり、彼女の私生活について根掘り葉掘り尋ねたり……。でも、これって実は変な話で、エミーは決して美人ではなく、病院の同僚からも「古風で野暮ったい」と思われていて、地位と名誉と財産と素晴らしい容貌に恵まれたルエルドとは、どう考えてもつりあう女性ではないし、しかも、彼にはアンゼリーネという美しい婚約者がいる……。普通なら、ルエルドのような男性が、エミーのような女性を気にする方がおかしいのです、が、気にしてしまうんですよね。
 最初は冷淡で傲慢で意地悪、と思っていたルエルドが、読んでいくうちにどんどん、優しくて親切で頼りになる人物に変化していきます。エミーの父親(教師だったのですが、数年前に解雇されました)が意に沿わない仕事をしていると知ると、伝を頼って教師としていい職場を探してあげたり(もちろん秘密裏に)、エミーが強盗に襲われた時も電話1本で駆けつけてきて、怪我が治るまで自分の屋敷で養生させたり。
 ルエルドには婚約者がいる。だからエミーはルエルドへの思いを諦めようとしますし、それはルエルドの方も同じで、結婚した後のアンネリーゼとの生活に不安を抱きながら、彼はエミーへの思いを断ち切ろうとします。でも、2人ともなかなか思うようにはいかないのです。
 ルエルドはニールズの作品のヒーローの中では堅物の部類に属します。要するに生真面目で、多分(あくまで私の想像ですが)女性とあまり付き合ったことがないのかもしれません。それに高潔な部分もあって、自分からプロポーズした以上、自分から婚約解消を持ち出すことは出来ないと考えます。それなのに、エミーたち一家が落ち着いたクリスマスを過ごすことが出来ないとわかると、クリスマスにオランダの自分の家に招待してしまう……。招待する方もする方だけど、それを受ける方も受ける方で……、でも、両親が承知してしまったからには仕方ありません。エミーと両親はルエルドと一緒にバタバタとオランダに出かけて行きます。
 オランダのルエルドの屋敷に着いたフォスター一家を、ルエルドの家族は暖かく迎えます。エミーはアンゼリーネに痛烈な皮肉を言われますが、彼の両親や妹たち、親戚の人々にはいたく気に入られ、特に、アンネリーゼを嫌っている妹たちはエミーこそ兄の花嫁に相応しい、何かが起こって、アンネリーゼとの婚約が破談にならないだろうかと願うのです。
 ヒーローには美人で性格の悪い婚約者がいる、という設定は、ニールズの作品の中ではもう何回も出てきますが、そういう設定の話でも、ヒーローの性格次第で印象は違ってくるものです。この作品の場合、ルエルドの真面目で高潔な部分と、エミーの控えめだけど、芯がしっかりしていて、常識的な穏やかさのある性格とがこの作品特有の風合いを醸し出してるんだろうなと思います。
 ちなみに、やどりぎというのは、他の木に寄生する植物で、西洋では魔よけとしてクリスマスにこのやどりぎを飾るのだそうです。そして、このやどりぎの下では、男性はどんな女性にもキスできるという慣わしがあって、ちゃっかりルエルドはその慣わしを利用してエミーにキスをします。この時点では、まだ婚約を解消していなかったので、ルエルドとしてはそのチャンスを利用するしかなかったんでしょうね。彼は本当に堅物です。でも、そう言う堅さも好ましい……。最初はあまり好きになれなかったヒーローですが、今では好きなヒーローのベストテンに入るほど気に入ってます。
 

あなたのいる食卓

あなたのいる食卓 原題:A Gentle Awakening 初版:1987
 
ヒロイン:フロリナ・ペイン(コック)
ヒーロー:ウィリアム・セドレー(医師、イギリス人)
 
 ニールズの作品は大好きな私ですが、どうしても読めないテーマの話(「とりあえず結婚もの」で、これについてはそのうち書きたいと思います)もあるし、読み終わってから「……?」という話もあります。今回はそんな、とてもちぐはぐな印象を持った作品についてです。
 
 まず、この作品で一番目を引いたのは、ヒロインの恋敵、つまりヒーローの婚約者、ワンダ・フォーテスキューの性格の悪さです。もう、憚る事のない毒舌(しかも、悪意に満ちた)家で、傲慢で、意地悪……。ヒロインの恋敵は性格が悪いと相場が決まってますが、それにしたって……と、思うくらい、今まで読んだニールズの作品の中では、彼女の性格の悪さはピカ一です。作品の中でヒロインのフロリナが、あまりのワンダの酷い言葉と、それに加えて平手打ちを食らわせられたことに腹を立てて彼女の頭からレモネードを浴びせかけるシーンがありますが、これはフロリナが気性の激しい女性だからではなく(彼女は控えめで優しい女性です、もちろん)、それほどワンダが酷い女性だからです。
 
 で、ヒーローのウィリアム様(作中では、フロリナが彼の家のコックをしてることもあってそう言う呼び名ででてきます)は、子煩悩で(ウィリアム様は結婚歴があり、ポーリンという名の可愛い娘がいます)、それに優しくて気がきく男性です。ポーリンと家政婦をしているナニーがはしかになって倒れた時、フロリナの孤軍奮闘振りを知った彼は、フロリナの代わりにいろんな家事を買って出てくれます。本当にやさしー男性なのですが、何で、ワンダなんかと婚約したの?しかも、ワンダの傍若無人の言動を見ても平然としてるし。わからないー。おまけに、彼の元の妻は、夫がありながら他の男性と遊びまわっていたというこれまたとんでもない女で、一度ならず二度までも、何でそう言う女に引っかかるんだろう。偉いお医者様なのに(あ、関係ないか)
 
 もっとわからないのは、フロリナと結婚することに決めたウィリアム様は、ロンドンの家でフロリナと生活するために(彼はロンドンで働いていて、生活の基盤はロンドンなのですが)、ポーリンを寄宿学校へ行かし、週末だけ家族3人で生活することにします。ちょっと待て、何でフロリナと結婚するからって言って、ポーリンを寄宿学校に追い払わないといけないの?家族3人、ロンドンの家で暮らせばいいじゃない。確かに、彼が田舎のウィール・ハウスを買ったのは、娘を田舎で育てたかったからですが、娘を田舎で育てるためなら(しかも、寄宿学校に入る段階で、もうウィール・ハウスには週のうち2日しか住めなくなるし)あんなに懐いていたフロリナと引き剥がすのも厭わないってことですか?わからないー!
 
 私が一番不可解に感じたのは、最後のポーリンの件ですが、それにしたって、ウィリアム様、やることがわからなさすぎです。

ドクターにキスを

ドクターにキスを 原題:An Ordinary Girl 初版:2001年
 
ヒロイン:フィリー・セルビー(家事手伝い)
ヒーロー:ジェームズ・フォーサイス(医師,イギリス人)
 
 最初に出版されたのが2001年ということです。つまり、ベティ・ニールズの亡くなった年……。他にも2001年に出版された本があったので、彼女は亡くなる直前まで小説を書いていたのかなあと、ちょっと驚きです。確か亡くなった時は90歳くらいだったはずなので、その点でも驚きなんですが……。
 
 この作品は他の2人の作家と一緒にコラボ的に出版された本の中の1作品で、他のニールズの作品よりもちょっと短いんですが、これまでの作品のニールズ的要素をふんだんに盛り込まれていて、小作品だけど今までの作品の集大成(といったら大げさですが)というか、典型そのままという感じのお話です。
 
 ヒーローはもちろん、医師でハンサムお金持ち。おまけに美人で意地悪な婚約者がいる。ヒロインは決して美人ではないが、気立てがよく、牧師の父、優しい母、美人の妹たち(4人)に囲まれて田舎暮らしに満足している。ある日、道に迷ったジェームズが通りかかったフィリーに道を尋ねたことがきっかけで2人は出会います。そのあとも神の導きのように偶然の出会いを繰り返していくうちに、ジェームズは自分が間違っていた事に気が付いていきます。そう、シビルと婚約した事です。
 
 ヒーローに婚約者がいる場合、ヒロインと恋に落ちたヒーローが、どうやって婚約者と婚約を解消するか、という問題からはどうしても逃れられません。ニールズの作品では偶然、婚約者の不貞が暴露され、めでたく婚約が解消されるというパターンが多いのですが、晩年の作品では、ヒーローが潔く自分から婚約解消を言い出すパターンが幾つか出てきます。「片思いの日々」のヘンリーもそうでしたし、この作品のジェームズもそうです。最も、彼の場合、解消を言い出そうとするたびに、それを察知したシビルに邪魔をされ続けてしまいますけどね。
 でも、シビルはジェームズを逃したくない一心で(愛しているからではなく、お金のために)策を弄しすぎて自滅……。結果的には目出度し目出度しなのでした。
 
 
 なにぶん、作品として短すぎて、もうちょっとじっくりと書いてもらいたかったなあと思わずにはいられませんが、それでも、しっかりニールズワールドを堪能できる作品です。

夢の先には

夢の先には 原題:Wish with The Candle 初版:1972年
 
 ヒロイン:エマ・ヘイスティングス(看護師)
 ヒーロー:ユスティン・テイリンゲン(医師、オランダ人)
 
 
 ベティ・ニールズに嵌り始めて2年になります。最初の頃は古本屋をあさってニールズの作品を集めていたのですが、そのうち手に入るものはほとんど読みつくしてしまいました。「でも、読みたい!全部で130作品以上あるんだもの!」と思って手を出したのがペーパーバック、つまり洋書です。最初は読み終わるんだろうかと自分でも半信半疑でしたが、じっくり時間をかければ読めるものですね。しかも、邦訳を読んでいるのと同じくらい感情移入できるし、感動も出来る。というわけで、ネットでニールズ作品の洋書を新刊、古本買い集め、今まで洋書で25冊くらい読みました。
 洋書で読む欠点は唯一時間がかかるということで、つまり、読み終わったあと、読み返すことがなかなか難しいと言うことです。読み返すのにも同じくらい時間がかかる(大体1作品1~週間かかる)と思うと読み返すのも億劫で……。でも、作品の中にはすごく気に入ったものがあって、どうしても読み返したい、と思うものは和書で探して可能な限り手に入れています。つまり、ここまでするのはかなり気に入った作品と言うことです。
 
 さて、前置きが長くなりましたが、これほど気に入った作品のひとつがこの「夢の先には」です。
 ヒロインのエマは数年前に父親を亡くし、看護婦として働きながら母親の生活と妹の医学校での勉学を支えているしっかりもので、美人ではないけれど仕事が出来て友人も多く、みんなに慕われている女性です。
 エマとヒーローであるユスティンとの出会いは、エマが母親とオランダ旅行をしていた時、車線を間違えてユスティンの車と事故を起こしたことから始まります。もう一度彼に会いたいと思いつつ、旅先での出会いだし、もう2度と会うこともあるまいと残念に思ったエマでしたが、本当にその通りならここで物語りは終わってしまいます。
 その後、エマがイギリスに帰り、病院での勤務を始めた矢先、当のユスティンが2ヶ月の期限付きでエマの勤める病院に外科医としてやってきました。さあ、ここから2人の恋の物語が始まります。
 実は、2人は出会った瞬間、お互いに恋に落ちたのですが、容姿に自信がもてない上に恋に晩熟のエマはユスティンが自分に恋をしているなんて夢にも思いません。そこでユスティンはエマの母親や妹、その他病院の同僚たちを巻き込んみながら、さりげなく、さりげなーくエマにアプローチしていくのですが……。
 ユスティンは40歳。ニールズの作品の中でも年齢高めの方ですが、そのおかげか、彼はとても大人で、見ていてとても安心できるヒーローの1人です。本当に優しい……。人それぞれ好みもあると思いますが、私はこういうヒーローが好きだなあ。でも、彼が大人なのは、ただ彼が40歳だからではなく、彼が人に配慮が出来る思慮深い男性だからであって、40歳といっても精神的に子供のままの男性は世の中にいっぱいいますけどね。
 年齢はさておき、こういう大人の男性に愛されるのって、幸せだろうなあと思うのですが……。ただ、こういった大人の男性は、自分のことしか考えなず、ただ庇護されることを望むような精神的に子供の女性は選ばないのです(最終的には)。ニールズの作品を読んでいると、つくづくそう思います。
 そう、エマのように、恋の手管は知らないけれど、しっかり地に足をつけて一生懸命生きている、そんな女性こそ、ユスティンのような男性に愛されて然るべきなんだなあと思います。
 

小さな愛の願い

 小さな愛の願い 原題:Only By Chance 初版:1996年
 
ヒロイン:ヘンリエッタ・クーパー(マナーハウスガイド)
ヒーロー:アダム・ロス=ピット(医師、イギリス人)
 
 この話も好きな話です。以前「誰が一番貧乏か」というタイトルで書いた時に、多分この作品のヒロインが一番貧乏なのでは、と書きました。後で色々な作品を読み返してみて、彼女と同じように貧乏なヒロインはたくさんいるということに気が付きましたが、それでも、このヘンリエッタが貧乏であることは間違いないと思います。

ヘンリエッタは幼い時に両親をなくし、祖父母に育てられましたが、彼女が6歳になろうとするとき、祖母が亡くなり、彼女のことを面倒みきれなくなった祖父によって孤児院に入れられます。孤児院は18歳までしかいられないところですが、その後3年ほど、子供たちに勉強を教えながらとどまっていましたが、孤児院の所長が代わった時に孤児院を追い出されて以来、ずっと一人で細々と暮らしていました。
 仕事は2つ掛け持ちしていますが、そのどちらも正規雇用ではなく、いつ首になってもおかしくない不安定なもので(実際、ひどい流感にかかった時に二つとも解雇されてしまいます)収入も僅かなのに、希望を失わず、明るく健気に生きている姿に、ほとんど涙……。

仕事を2つ同時に失い、おまけに入院している間に住んでいたアパートまで他人に貸し出されてしまい、住むところも無くなったヘンリエッタに、彼女が勤めいていた病院の医師、アダムが救いの手を差し伸べます。彼の知り合いがマナーハウスの公開の日数を増やすためにスタッフの増員が必要になったという話を聞き、アダムはヘンリエッタを紹介したのです。
 それ以降、ヘンリエッタの生活は今までとは全く違ったもの(かなりよい方向に)になり、ヘンリエッタは忙しく働きながら充実した毎日を送ることになりますが、心情的にはかなり色々あるのです。
 まず、全くつりあわないとわかっていながらアダムに恋をする。自分の雇い主、サー・ピーターの甥のマイクがちょっかいを出してくる。アダムと結婚しようと狙っているはデオドラは美人だけど超我儘で高飛車。アダムは資産家で立派な家を二つも持ち、医学会でも高く評価されて、おまけにハンサム。お金も身寄りも専門的な技術も何も持っていないヘンリエッタは、彼に恋をしていると認識した瞬間に彼のことを諦めます。「もちろんこれは秘密にしなければならない。なんとか工夫して彼に会わないようにする必要がある」と言うわけで、彼とのささやかな思いを胸に生きていこうとするわけです。泣けるんですよね。こんな女の子見てると……。
 休暇でマッティという老婦人の家を訪ねたとき(これもアダムの計らいなのですが)近くの牧師館の息子デヴィッドと知り合いになり、マナーハウスに戻ってきてから、彼からまた会いたいという手紙を貰います。ヘンリエッタは、アダムは手の届かない存在なので、デヴィッドと付き合ってみようかとそのときは考えますが、夜になるとそれではいけないと思うのです。「それではデヴィッドに失礼だし、アダムに取って代わることは誰にも出来ない」そして、猫のディケンズに話しかけます。「私、オールドミスになるからね」

報われないと知りつつ、一人の人に思いを寄せるとか、彼以上の人はこの世にいないと考えることは、現実的に考えれば馬鹿げてる、と思うのです。人の心は移ろうものだし、この先もっと素敵な男性に出会えるかもしれない。でも、恋をしている時って、そういうものなんですよね。ニールズのヒロインたちは大抵そうなんですが、自分がヒーローと結ばれる可能性はないと知りつつも、ヒーローの幸せを願うのです。彼が結婚する相手が、どうか彼をちゃんと世話して愛してあげて欲しい……。ニールズの作品の中によく出てくる格言で「恋と戦争は手段を選ばない」というのがありますが、どんな手を使ってでも相手と結婚しようと頑張るヒロインの恋敵たちは、結局のところヒーローを愛しているわけではないのです。もし、本人がそう思っていてもそれは間違い。本当の愛とは、心の底から相手の幸せを願うことなのではないかと思うのですけどね……。もっとも、ニールズはいつでも、その、ヒーローの幸せを、ヒロインが実現させてくれるように計らってくれます。だからこそのロマンス小説です。
 
 

愛は深く静かに


愛は深く静かに 原題:The Quiet Professor、初版1992年

ヒロイン:メガン・ロドナー(看護師)
ヒーロー:ヤケ・ファン・ベルフェルト(医師、オランダ人)
 

 これは結構好きな話です。5回くらいは読み返しているはず(私の好きな作品の度合いは読み返した回数でわかります)。

 話の筋は、「ヒロインには婚約者がいる」→「その婚約者との破局を迎える」→「かねてからヒロインを好きだったヒーローが、ヒロインの心の傷を癒し、かつ、彼女の心を射止める」というパターンで、これとよく似た話に「幻のフィアンセ」「めぐる季節の贈り物」があります。この3作品、ヒロインがみんな美人で、背が高く、ヒーローとは勤務する病院で医師と看護師という関係というところまで同じという、本当に似てるんですが、「幻のフィアンセ」はヒーローが結婚歴があって、子供がいるというところが、「めぐる季節の――」はヒロインの元婚約者がとんでもなくひどい奴だったというところが(この作品の元婚約者はそれほどひどい人ではないのです)違います。あとは、大体一緒かなあ……。ただ、ほとんど同じ話にもかかわらず、私のお気に入り度合いで言えば、どうしても「幻の――」や「めぐる――」の方に軍配が上がってしまうのは、ヒーローのヒロインに対するかかわり方のちょっとした違いのせいかなあと思います。

 いや、ヤケは素敵なヒーローですよ。原題の通り、病院内では無口でとっつきにくい教授として見られていても、本当は優しくて、ヒロインのためならどんな苦労も厭わない(ただ、それをヒロインに悟られないようにしてますが)。元婚約者のためを思って自分から身を引いたにも係わらず、ずっと彼のことを引きずってめそめそしているメガンに、「仕事をやめて環境を変えてみては」とオランダの孤児院で働くことを勧めた上、彼女が可能な限りスムーズに仕事を辞められるようにヤケは「多くの時間を割き、考えをめぐらせ、根回しをし」準備を整えます。自分の答えたくない質問は無視したり、あくまで自分の考えたことを押し通そうとするところはあっても、それはそれで頼もしい……。
 
ただ、そうして、無理やり(?)オランダにつれてきたメガンに対して、突き放すような態度を取ってしまうヤケにちょっと引っかかるんです。ヤケとしてみれば、メガンの環境を変えるにしたって、自分の目の届く所に置いておきたいと思うと言うのは理解できますが、だったら、もっと優しくしてやれば? このままでは、メガンが可哀想だ……。後半はそんな思いで読んでました。でも、まあ、彼としても、歳の差のことを考えたりして(と言っても、多分10歳くらいしか違わないはず)、苦悩はしてたみたいですが。

 余談ですが、ニールズの作品は2000年位から「ハーレクイン・イマージュ」として出版されていますが、それ以前は「ハーレクイン・ロマンス」でした。で、「ハーレクイン・ロマンス」の表紙は以前はイラストだったんですね。で、この作品の表紙を飾るヒーローとヒロインのイラストは、本当に作品のイメージどおりだなあと思っています。

 

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HN:
Mrs Green
年齢:
58
HP:
性別:
非公開
誕生日:
1965/07/23
職業:
主婦
趣味:
ありすぎて書ません
自己紹介:
夫と子供2人の専業主婦です。
宮崎生まれで、現在沖縄に住んでいます。
青い海も好きですが、それよりふるさとの緑の山々が恋しい……。
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